研究課題/領域番号 |
15K11272
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
久保 亜抄子 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (70733202)
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研究分担者 |
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 准教授 (20362238)
本田 訓也 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (20548945) [辞退]
片桐 綾乃 日本大学, 歯学部, 助教 (40731899)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 顎関節症 / 咬筋痛 / 神経成長因子 / 三叉神経節 / 延髄 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、ラット咬筋への電気刺激のパタンおよび咬筋電気刺激と僧帽筋への神経成長因子(ラット由来)投与のタイミングの検討を中心に行った。咬筋へ10Hz, 10mAの電気刺激を毎日加えると、刺激3日目から刺激終了までの間、有意に咬筋の機械刺激逃避閾値が低下したことから、刺激強度を50%(5mA)として5日間連続刺激したところ、咬筋の閾値低下は起こらなかった。そこで、この50%刺激もしくは完全強縮が起こる100Hz(1.5mA)刺激とともに僧帽筋へ神経成長因子(16μg)を投与して咬筋の機械逃避閾値の測定を行った。雄性Sprague-Dawleyラットに対し、神経成長因子を僧帽筋に5日間投与後に咬筋への電気刺激(10Hz, 5mA)を5日間施行した場合には、電気刺激のみの群と神経成長因子投与+電気刺激群との間には差がなかった。次に、雌性ラットを使用して同様の実験を行ったが機械閾値には変化がなかった。また、雄性ラットに対し、咬筋へ100Hz, 1.5mA電気刺激および僧帽筋への神経成長因子投与を5日間連続で同時に行った場合にも閾値の低下はみられなかったが、その後さらに咬筋を5日間連続刺激(5mA, 10Hz)したところ、刺激3日目から刺激終了3日目まで逃避閾値の低下傾向がみられた。一方、神経成長因子単回投与による機械刺激逃避閾値の検討を行った結果、神経成長因子40μg投与下の咬筋では投与後4時間から5日後まで機械逃避閾値の低下が引き起こされたことから、雌性ラットに対して咬筋へ100Hz, 1.5mAの電気刺激および僧帽筋への神経成長因子(40μg)投与を5日間連続で同時に行ったところ、刺激開始1日目から機械逃避閾値の低下傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床上顎関節症患者の多くは女性であることに鑑み、今年度途中から雌性動物を使用することに変更したため、神経栄養因子の投与量・咬筋の電気刺激強度と電気刺激パタン・刺激のタイミングなどの条件の再検討が必要となった。一方、グリア-ニューロン連関をリアルタイム解析するために行う電気生理学的実験系(スライスパッチクランプ法)の構築にはすでに着手しており徐々に確立できつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後も交付申請書に記載した「研究の目的」に沿って研究を推進していく。雌性動物における異所性慢性筋痛モデルを確立する。さらに本モデルにおいて延髄もしくは三叉神経節内のミクログリアやサテライトグリア細胞の関与の有無を確認する。グリア細胞の活性化によって二次ニューロンもしくは一次ニューロンの機能変化を引き起こすために必要な疼痛関連蛋白質を探索する。まずは免疫組織化学的解析により各種マーカーやチャネル受容体の発現の有無や増減を確認した後、電気生理学的手法を用いてリアルタイム解析を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備備品として購入した物品が、定価より1割程度安く購入できたことのほか、メーカーを特定する必要がなく、急を要しない抗体や試薬に関しては、なるべく安価なものを購入したことから予算に若干の余裕が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度分として請求した助成金と合わせて、神経トレーサーや抗体の購入費用としての使用を計画している。本年度は、実験動物、薬品や実験器具といった消耗品費および国際学会(欧州疼痛学会)への参加費および旅費に使用する計画をしている。
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