研究課題
【目的】これまでに、GeneChip Mapping 10K Array による解析を行い、口腔扁平上皮癌細胞に共通して認められるゲノムコピー数異常を検出し、同座位に存在する口腔癌関連遺伝子候補をリストアップしてきた。本年度は、口腔扁平上皮癌細胞に共通してコピー数の減少が認められた座位の一つである10q21.3領域に着目し解析を行った。同部位にはSirt1遺伝子が座位している。Sirt1は細胞分化、エネルギー代謝、アポトーシス、ストレス抵抗性、DNA損傷修復等の機能を有し長寿遺伝子と呼称されている。一方で、Sirt1は各種悪性腫瘍細胞が発現異常を示すことが報告されている。そこで、口腔扁平上皮癌細胞における長寿遺伝子Sirt1の発現状態を解析した。【材料および方法】実験材料は口腔扁平上皮癌由来細胞株6株、コントロールとして表皮角化細胞株を使用した。Sirt1のmRNA発現状態は定量的Real-time PCR法により定量した。タンパク質の発現状況はWestern blotting法、免疫蛍光染色法により解析した。
2: おおむね順調に進展している
定量的Real-time PCRの結果、表皮角化細胞と比較して口腔扁平上皮癌由来細胞株6株中5株(83.3%)においてSirt1 mRNAの発現低下が認められた。タンパク質の発現状態もmRNAの発現と同様に発現低下が認められ、おおむね順調に進展している。
Sirt1は、前立腺癌、乳癌、大腸癌等において発現が亢進し、分子標的治療の候補分子とされている。一方で、膀胱癌、肝癌、皮膚癌、卵巣癌等では発現低下が報告されている。本研究の結果、Sirt1は口腔扁平上皮癌細胞においては発現低下を示し、癌抑制遺伝子である可能性が示唆された。今後、Sirt1遺伝子の機能解析を行い、口腔扁平上皮癌患者の新たな診断方法や治療法の確立を目指す。
本研究は研究代表者が所属する研究機関単独では完遂することが困難となるため、平成28年度より新たに研究分担者が2名追加された。そのため、平成28年度は助成金を全額使用できず、翌年度へ合わせることとなった。
平成29年度は口腔扁平上皮癌由来細胞株6株のほか、口腔扁平上皮癌患者からも試料を採取し、Sirt1のmRNA発現状態は定量的Real-time PCR法により定量する。タンパク質の発現状況はWestern blotting法、免疫蛍光染色法により解析する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology
巻: 28 ページ: 26-29