研究実績の概要 |
本年度は申請書に記載した研究目的のうち① 培養顎下腺原基の分枝形態形成に対するSHHの影響(至適濃度の再検討) ② SHHによるEGF受容体タンパク質の発現誘導 ③ SHHによるEGF受容体のmRNAの発現誘導について検討を行った. 【研究成果】 ① 胎生13日齢の顎下腺原基に200 ng/ml, 500 ng/ml, 1,000 ng/mlおよび2,500 ng/mlのSHHを作用させ,分枝形態形成へのSHHの影響を検討した.その結果,1,000 ng/mlおよび2,500 ng/mlのSHHを作用させた顎下腺で,分枝形態形成が有意に促進されることがわかった.この結果から,以降の実験で用いるSHHの濃度を1,000 ng/mlとすることにした.② 胎生13日齢の顎下腺に,SHH(1,000 ng/ml)を0, 6, 12, 24および48時間作用させ,タンパク質抽出用の試料とした.回収された試料を用い,EGFR(ErbB1)の特異抗体を用いてイムノブロット解析を行なった.その結果,SHHで刺激6時間後からErbB1タンパク質量の増加と,ErbB1のリン酸化の亢進が認められた.③ 胎生13日齢の顎下腺に,SHH(1,000 ng/ml)を0, 1/2, 3, 6, 12, 24および48時間作用させ,RNAを抽出用の試料とした.回収された試料を用い,リアルタイムPCRを実施した.その結果,SHHでの刺激後,3時間目からErbB1, ErbB2およびErbB3のmRNAが有意に増加することが明らかになった. 【意義・重要性】 顎下腺の分枝形態形成にSHHが関与していること,また,SHHによる分枝形成促進作用に,EGF受容体が関与していると考えられた.このことから,顎下腺の器官形成におけるSHHの重要性が示唆された.
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