研究実績の概要 |
現在までの研究により,Shhにより顎下腺の分枝形態形成が促進すること,またShhによる分枝形態形成促進作用はShhを作用させることによって起こるEGF受容体およびEGFリガンドの発現促進が関与していることを明らかにした.本年度は,Shhを作用させることによって顎下腺内でどのようなシグナルが応答するか検討した.さらに,Shhシグナルの転写因子の発現量の変化について検討を行った. 【研究成果】 ① 胎生13日齢の顎下腺原基を1,000 ng/mlのShhで0時間,6時間,12時間,24時間および48時間刺激した.刺激後の試料からタンパク質を抽出し,リン酸化ERK1/2の変化を検討した.その結果,Shh刺激後6時間でERK1/2のリン酸化が亢進し,12時間後にコントロールレベルまでERK1/2のリン酸化が減少した.しかし,shh刺激24時間,48時間後には再び,ERK1/2のリン酸化が促進することがわかった.② 胎生13日齢の顎下腺原基を1,000 ng/mlのShhで0時間,30分,1時間,6時間,12時間,24時間および48時間刺激した.刺激後の試料からmRNAを抽出し,Shhの下流に存在するシグナルの転写因子であるGli1の発現量の変化を検討した.その結果,刺激後3時間から24時間にかけてGli1のmRNAの発現が増加していることが分かった. 【意義・重要性】 ShhはGli1 の発現を上昇させ,間葉におけるEGF ligandの発現上昇と上皮におけるErbB量を増加させることによりEGF/EGFR(ErbB)シグナルを活性化し分枝形態形成を促進させることが明らかになった.このことから,顎下腺の発生過程には様々な因子が関与することが知られているが,現在までに明らかにされていなかったShhの役割の一端を解明したことに重要性と意義がある.
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