研究課題/領域番号 |
15K11283
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
野崎 中成 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (90281683)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 再生医学 / 幹細胞 / 細胞外RNA / 機能性RNA / 次世代シークエンス |
研究実績の概要 |
多能性幹細胞から遊離する細胞外small RNAを介してどのように細胞間コミュニケーションを図っているかを分子レベルで明らかにするため、胚性幹(ES)細胞を用い、細胞外に遊離されるエクソソーム中のsmall RNAを網羅的に解析した。野生型(Parp1+/+)ES細胞株と両側アレルを破壊したParp1 欠損型(Parp1-/-)ES細胞株の培養上清より、Total Exosome Isolation Reagentを用いて、エクソソームを単離し、RNAを抽出した。シークエンスライブラリの調整のため、1本鎖RNAを対象に両末端に特異的なアダプターを付加し、両末端アダプターに特異的なプライマー(アダプター配列+イルミナのシークエンスに必要な配列を持つプライマー)を用いてPCR増幅を行った。アダプターダイマー等の短い断片を除去するため、磁気ビーズによる精製を行った。イルミナ社の次世代シークエンシングプラットフォームHiSeqを用いて、次世代シークエンス解析を行った。得られた50bpのシングルエンドリードは、マウスのレファレンスゲノムへのアライメントを行い、miRNA, snRNA, snoRNA, tRNA を含むsmall RNAの分類を行った。Parp1+/+およびParp1-/- ES細胞株由来のエクソソームにおけるmiRNAの割合は、各々、8.2%および3.5%であった。リードをカウント後、定量化を行い、Parp1遺伝子型により有意に発現変動しているmiRNAを、発現上昇群と下降群に分けて抽出したところ、上昇群は118個、下降群は211個であった。miRNAの発現変動は、miRNAのターゲット遺伝子の発現を制御すると考えられる。データベースを用いて有意に変動するターゲット遺伝子の予測解析を行う。次に、生物学的機能を検討するため、Gene Ontology解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養上清よりエクソソームを単離し、RNAを抽出した。次世代シークエンス解析を行い、得られた配列断片よりsmall RNAの分類を行った。有意に発現変動しているmiRNAの抽出を試みている状況である。平成28年度に予定している、ターゲット遺伝子の予測解析、そのターゲット遺伝子に共通する生物学的機能を解析するための準備段階にあり、当初予定していた計画と照らして、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
多能性幹細胞から遊離する細胞外small RNAを介してどのように細胞間コミュニケーションを図っているかを分子レベルで明らかにするため、機能性small RNAの中でもmiRNAを対象とする。すなわち、多能性幹細胞から遊離したエクソソームにより運ばれ、細胞外で機能するmiRNAに関する研究へ展開する。独自に作製したParp1を操作したマウス由来幹細胞を用いるという特色を生かして、細胞外miRNAの機能におけるParp1の関与に焦点を絞る。次世代シークエンスを用いて、miRNAを含む低分子RNAの網羅的解析を行ってきた。平成27年度に得られた結果を基にして、Parp1-/- ES細胞由来エクソソームにおいて有意に発現変動した細胞外miRNAを抽出する。解析から得られたリード配列情報を基に解析を行うため、リードのトリミング、リファレンスゲノムへのアライメントを行う。データベースを用いて、有意に発現変動するmiRNAに対し、ターゲット遺伝子の予測を行う。予測ターゲット遺伝子に共通する生物学的機能を見出すため、Gene Ontologyによるenrichment解析を行う。生物学的経路をマップに表示してデータを視覚化するため、Pathway解析を行う。エクソソームは血液、唾液、尿、脳脊髄液、羊水などの体液中に広範に存在する。エクソソームには、機能性RNAやタンパク質が含まれていて、細胞間の情報伝達機能を持つことが示唆されているため、エクソソーム中の機能性RNAやタンパク質は、疾患や生命現象のバイオマーカーとして注目されている。Parp1遺伝子型によるエクソソームmiRNA の差異を比較することで、miRNAを介したParp1の細胞外機能を解明し、miRNA創薬へ発展させるための一翼を担う基盤的研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行のため、大学の研究費等も充当したため、当該基金の一部を使用せず、翌年度分へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で得られた成果を、学術誌や国際会議で報告するにあたり、一部は、英文校正費として使用する予定である。それ以外は物品費として、試薬等の消耗品としても使用する予定である。
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