研究実績の概要 |
細胞外miRNAを介した細胞間コミュニケーションにおけるParp1の関与について解析を進めた。独自に作製した細胞株であるParp1の両側アレルを欠損させたES細胞株を用い、Parp1欠損によるES細胞エクソソーム中に含有されるmiRNAの変動を調べた。変動したmiRNAの発現をリアルタイムPCRで定量的に評価し、Parp1欠損により発現が有意に2倍以上増加するmiR365-3p、let-7a-5p、miR196b-5p、miR203-3p、miR98-5p、miR146a-5pを抽出した。miRNAに対する候補ターゲット遺伝子は、超幾何分布を用いて有意に変動しているものを抽出した。Parp1遺伝子型により発現の差異のあるmiRNAを抽出し、miRNAのターゲットとなるmRNAを指標にして、GO enrichment 解析を行うと、miRNAの機能をある程度推測できるため、その機能へのParp1の関与を評価した。Parp1欠損による有意に変動するターゲット遺伝子には、MAPK signaling pathway 上に存在するElk1, Map4k3, Map4k4, Mapk8が含まれていた。リアルタイムPCRで定量的に評価し、標的細胞であるES細胞においてこれらの遺伝子の発現は減少していた。miRNA発現が上昇しているpathway上にあるこれらターゲット遺伝子は負に制御される可能性がある。これらターゲット遺伝子は、増殖やストレスに関連した細胞内シグナル伝達と細胞間コミュニケーションのGO termとの関連が示唆されたので、Parp1欠損によりこれらの機能が抑制される可能性が示唆された。Parp1は、エクソソームmiRNAを介して細胞間コミュニケーションに関与することが示唆された。本研究で得られた成果は、国際学術誌に報告した。
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