研究実績の概要 |
研究代表者らが樹立したヒト正常舌角化細胞(Human Tongue Keratinocyte: HTK)を用いたin vitro 口腔発癌モデルを利用し、分子標的薬、放射線治療などの抗腫瘍効果を検討する。その結果を踏まえ、口腔がんにおける転移関連遺伝子・がん幹細胞関連遺伝子など新たに分子標的候補を検索し、それらを標的とした治療法の開発を目指している。 Human papillomavirus(HPV) 感染陽性のHTK細胞及びHPV陰性のHTK細胞、さらに従来よりin vitroで研究が進んでいるHSC-3およびリンパ節転移株であるHSC-3M(いずれもHPV陰性)、SCCKN(HPV陰性)、SCC25(HPV陰性)、UPCA-SCC090((HPV陽性)を用いて頭頸部がんにおいて第一選択薬であるシスプラチン、および頭頸部がんで唯一使用可能なセツキシマブへの感受性及び放射線感受性を検討した。 その結果、HPV陰性培養細胞は、HPV陽性培養細胞と比べてIC50は高く、放射線も閾値は高かった。これはがん化学療法における耐性につながるものであると考えた。さらにこれらの細胞のEGFRの遺伝子変異を次世代シークエンサーを用いて解析すると、EGFRの遺伝子変異の部位・個数には耐性は影響しないことが確認された。現在のところ、EGFRのコピー数の変化は確認できていないので結論は出ないが、EGFRにおける遺伝子変異が耐性獲得に関与する可能性は低いと思われた。また、CDDP, Cmab、放射線すべてに耐性傾向をしめすSCCKNのEGFRよりも下流のシグナルを検索するとPI3Kに変異が存在することが確認され、抗がん剤耐性獲得においてはPI3K-AktシグナルやMAPK経路など、より下流のシグナル遺伝子の変異が強く影響する可能性を見出した。
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