研究課題
近年数々の分子標的薬の臨床応用により、癌治療は新たな転換期を迎えている。口腔領域においても抗EGFR抗体であるセツキシマブの適応により、治療成績の飛躍的な改善が期待されている。しかしながら、driver oncogeneを標的とした薬剤に関しても耐性獲得の報告がなされており、その背景には「癌の不均一性」という大きな問題が存在する。そのため、今後、新たな創薬研究に際しては、癌組織という複雑な細胞集団における不均一性の正確な評価が求められる。本研究では口腔癌の「正常→上皮性異形成→癌」という発癌過程における不均一性の評価法の開発を図り、口腔癌の個別化医療への応用を試みる。口腔癌の正常上皮→白板症(上皮性異形成)→浸潤癌という多段階発癌過程での組織を構成する細胞クローンの変化を追跡する目的に、各過程での臨床検体のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルを対象に、SNPs arrayを用いたコピー数の変化を指標に不均一性の評価を試みた。舌癌原発巣と同一患者に生じたリンパ節転移巣に生じているゲノム変化をSNPsアレイを用いて解析し、E2F遺伝子がリンパ節特異的にコピー数が増加しており、タンパクレベルにおいても舌原発巣に比較して有意にリンパ節転移巣では発現が亢進していることを見出し、口腔癌リンパ節転移巣で被膜外浸潤を呈する症例を対象とし、転移リンパ節のさまざまな状況と臨床的因子の相関性について解析し、リンパ節の大きさが小さな症例のほが、大きな症例に比較して再発しやすく、経過が不良であることを報告してきた。本年度は、口腔癌に関するビックデータを用いた解析をすすめ、HPV感染がある一定の割合でその発生・進展に関与していることを見出し、発表した。
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Cancer Chemother Pharmacol.
巻: 81(3) ページ: 549-554
10.1007/s00280-018-3531-x. Epub 2018 Jan 30.