研究課題
(1)HPV16 E6/E7発現と癌幹細胞形質との関係:HPV16陽性扁平上皮癌細胞の癌幹細胞形質を明らかにするため、HPV16 E6/E7陽性の扁平上皮癌細胞Caskiを用いて検討を行い、コントロール細胞としてHPV陰性のHTB-31細胞を用いた。また、癌幹細胞形質を検討するため、スフィアアッセイを行った。その結果、Caski細胞は多くの球状コロニーの形成を示したが、HTB-31細胞はコロニーの形成を示さなかった。また、球状コロニーを形成した細胞は、蛍光免疫染色にて癌幹細胞マーカーのCD44及びALDH1の高発現を示した。さらに、Caski細胞のスフィアコロニー形成はE6/E7 siRNA knockdownにより抑制されたことから、コロニー形成にはE6/E7が重要な役割を持つことが示唆された。(2)口腔および咽頭含嗽サンプルを用いた口腔内HPV16 感染の検討:94人の健常者から得られた、口腔含嗽および咽頭含嗽サンプルを用いて、HPV16 DNAの発現をPCR法にて検索した。その結果、HPV16陽性率は、咽頭含嗽サンプルでは28.7%、口腔含嗽サンプルでは16.0%で、咽頭含嗽サンプルでHPV16陽性率が高いことが明らかとなった。このことから、中咽頭では口腔内よりもHPV16感染が生じやすいことが示唆された。また、口腔含嗽サンプルでは、HPV16感染率は女性と比べて男性において有意に高いことが明らかとなった。(3)メタ解析による口腔内HPV感染のリスクファクターの検索:健常者のHPVの口腔内感染を調査した疫学研究を収集し、HPV感染のリスクファクターを同定するためメタ解析を行った。その結果、オーラルセックスと喫煙が口腔内HPV感染における重要なリスクファクターであることが明らかとなった(Shigeishi and Sugiyama. J Clin Med Res, 2016)。
2: おおむね順調に進展している
HPV16陽性扁平上皮癌細胞は癌幹細胞形質を有し、そのコロニー形成にはE6/E7が必要であることが明らかとなった。このことから、HPV16 E6/E7は癌幹細胞形質に関与している可能性が示唆された。さらに、含嗽サンプルを用いた疫学研究から、男性が口腔内でのHPV16 感染の危険因子の一つであることが明らかとなった。
①HPV16陽性扁平上皮癌細胞におけるHPV16 E6 knockdownの影響の検討:HPV16 E6 siRNA発現ベクターを用いて、HPV16陽性扁平上皮癌細胞に遺伝子導入を行い、自己複製能、分化能、細胞浸潤能、幹細胞マーカー発現等について検討する。これにより、HPV16 E6の癌幹細胞形質獲得への関与を明らかとする。さらに、HPV16 E6を knockdownした Caski細胞を用いて、抗癌剤により誘導されるアポトーシス細胞の検出を行い、HPV16 E6がアポトーシスに与える影響を検討する。②口腔扁平上皮癌患者および健常者の口腔内擦過物を用いたHPV DNAの検出と遺伝子型の同定:広島大学大学院医歯薬保健学研究院倫理委員会による承認の下で、口腔癌患者および健常者の口腔内および咽頭部から擦過物を採取し、HPVの検出および遺伝子型の同定を行い、HPV感染と臨床病理学的指標との関係を検討する。
HPV16ノックダウン細胞を作成する際に使用した試薬が予定金額を下回ったため。
次年度使用額については、引き続いてノックダウン細胞の培養試薬やHPV DNA発現検索のためのPCR用試薬の購入に充てる計画である。
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