研究課題
各種口腔癌細胞に対するmTOR、p-mTORおよびmTORC1の発現をWestern blot.にて検索したところ、SCC25では顕著に発現が高く、HSC4は高発現、HSC2、HSC3、Ca9-22は中等度発現、SCC4とSASはやや低発現を示した。次に各種mTOR阻害剤による増殖抑制効果を検索したところ、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムスはともに、m-TOR、p-mTORおよびmTORC1発現が高発現の細胞程、低濃度のmTOR阻害剤に感受性を示した。すなわちSASやSCC4ではラパマイシン1μg/ml以上の濃度で増殖抑制効果が認められたのに対して、SCC25やHSC4では10ng/ml以上の濃度で増殖抑制効果が確認できた。また、エベロリムスの場合、IC50は、SCC25では約1100 ng/ml、HSC4では約17 ng/mlであった。一方、5-FU、シスプラチン(CDDP)、ドセタキセル(DOC)、パクリタキセル(PTX)、セツキシマブ(C-mab)、放射線(RT)の増殖抑制効果とmTOR、p-mTORならびにmTORC1の発現の間には明らかな相関を認めなかった。そこで、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムスの何れか一つと、5-FU、CDDP、DOC、PTX、C-mab、RTの何れか一つとの併用処理を行ったところ、それぞれ相加効果程度以上の増殖抑制効果を認めたが、mTOR阻害剤とC-mabとの併用も効果が認められ、この際、HaCatや線維芽細胞への増殖抑制効果が最も少なかった。なお口腔扁平上皮癌患者におけるmTOR、p-mTORならびにmTORC1の発現は正常粘膜部に比較して腫瘍細胞で検出され、進展症例や頸部転移症例で有意にp-mTORの発現が高かったため、mTOR阻害剤と既存の化学療法剤等との併用療法により効果的な治療法が開発できる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
各種口腔癌細胞に対するmTOR、p-mTORおよびmTORC1の発現をWestern blot.にて検索し、SCC25では顕著に発現が高く、HSC4は高発現、HSC2、HSC3、Ca9-22は中等度発現、SCC4とSASはやや低発現を示すことを明らかにできた。さらに、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムスともに、m-TOR、p-mTORおよびmTORC1発現が高発現の細胞程、低濃度のmTOR阻害剤に感受性を示すことを確認できた。また、5-FU、シスプラチン(CDDP)、ドセタキセル(DOC)、パクリタキセル(PTX)、セツキシマブ(C-mab)、放射線(RT)の増殖抑制効果とmTOR、p-mTORならびにmTORC1の発現の間には明らかな相関を認めないことを明らかにできた。なお、mTOR阻害剤と既存の化学療法剤等との併用処理は、それぞれ相加効果程度以上の増殖抑制効果を示すことを確認した。さらに、mTOR阻害剤とC-mabとの併用処理は、HaCatや線維芽細胞への増殖抑制効果が最も少ないことを見出した。また、口腔扁平上皮癌患者におけるmTOR、p-mTORならびにmTORC1の発現は正常粘膜部に比較して腫瘍細胞で検出され、進展症例や頸部転移症例で有意にp-mTORの発現が高いことを確認した。以上の結果から、研究計画の通り、おおむね順調に進展していると考えている。
口腔癌細胞に対する効果的なmTOR阻害を目指した化学療法あるいは化学放射線療法レジメンの検討を目的に、平成27年度の研究結果から顕著な細胞像抑制効果だけでなく効果的なp-mTOR阻害効果に着目してレジメンを絞り込む。この際、HaCatや線維芽細胞への増殖抑制効果を指標に、有害事象抑制も考慮する。さらに細胞老化を促進するp16INK4aの発現、細胞分裂能の喪失を防ぐヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の発現、長寿遺伝子sirtuinの発現、生存シグナルであるPI3K/Aktの発現、細胞周期を停止させるp27、p21の発現、血管新生に関わるVEGFの発現、リンパ管新生に関わるpodoplaninの発現に与える影響をWestern blot.、ELISAあるいは定量RT-PCR法を用いて検索する予定である。
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