研究課題
現在われわれは、早期発見や発癌リスク評価のための1次スクリーニングとして施行可能な口腔癌診断法の確立を目指している。含嗽液は非侵襲的かつ簡便に採取でき、診断の際の理想的な試料である。またDNAメチル化状態は病変の早期や発症前にその異常を示すことから、口腔癌の早期検出および発癌リスクの評価のマーカーとして有用である。われわれは既に含嗽液を用いた検討で口腔癌に特異的な異常メチル化を示す遺伝子群を報告しているが(Cancer. 2012 1;118:4298-308)、これまでに前癌病変における同様の検討はない。本研究の目的は、含嗽液を試料として前癌病変に特異的なメチル化異常を示す癌抑制遺伝子群を同定し、それらを用いた早期口腔癌検出システムを構築することである。20例の白板症患者と54例の口腔健常者から含嗽液を採取し、MS-MLPA法で26種類の癌抑制遺伝子のメチル化状態を一期的かつ定量的に検索したところ、15遺伝子において両群間に平均メチル化量の統計学的有意差を認めた。因子分析と主成分分析により選択された5遺伝子(MLH、RASSF、APC、KLLN、CD44)の異常メチル化を指標として白板症診断の精度を検討したところ、サポートベクターマシーン解析による正診率は84%であった。またROC解析により選択された5遺伝子(RASSF、FHIT、CD44、DAPK、BRCA2)の異常メチル化を指標とした白板症診断の正診率は感度98%、特異度94%であった。白板症に特異的なDNAメチル化異常を用いた診断システムはその検出に際し高い正診率を示した。以上の結果から、含嗽液による癌抑制遺伝子異常メチル化の検出は白板症を含む口腔癌前癌病変の非侵襲的なスクリーニング法として有効である可能性が示唆された。(特開2015-172327、2015年;PCT/JP2016/075667、2016)
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