研究課題/領域番号 |
15K11299
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
渋谷 恭之 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90335430)
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研究分担者 |
増田 誠司 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20260614)
梅田 正博 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (60301280)
青木 尚史 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (60747252)
堀井 幸一郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (70571686)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イソフラボン |
研究実績の概要 |
研究代表者らは4-nitroquinoline 1-oxide誘発ラット舌前癌病変モデルを作製中であり、既に組織学標本では前癌病変の成立を認めている。これを定性、あるいは定量的に評価するために、DNA合成期の有用なマーカーで細胞増殖性の指標であるPCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)、癌抑制遺伝子の一つでアポトーシスなどの細胞増殖サイクルの抑制を制御する機能を持ち、癌では機能不全に至っていると考えられるP53、細胞内シグナル伝達系を介して活性化される転写因子で多くの癌細胞では恒常的に活性化されているNF-κBなどを用いて、ウエスタンブロッティングによるバンドの違いを比較検討中である。一方、分担者である京都大学の増田准教授らは、安全性が担保されている食品化合物に着目し、抗癌作用の新たなプロセスであるmRNA成熟過程を阻害する化合物の探索に着手している。これまでに食品由来の化合物として緑黄色野菜中のカロチノイド、ニガウリ中の共役リノレン酸、緑茶中のカテキン類、ホウレンソウ中の糖脂質画分、ニンニクやタマネギ中レクチン活性画分、ワサビ中のイソチオシアネートなどには抗腫瘍活性があると報告されているが、増田らはコメ、コムギ、ミソ、大豆などから既に新規化合物を複数見いだしており、フラボン類であるアピゲニンやルテオリンなどが候補に上がっている。これらは下記論文でその一部を報告している。 The isoflavone fraction from soybean presents mRNA maturation inhibition activity. Biosci Biotechnol Biochem. 81: 551-554, 2017.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4-nitroquinoline 1-oxide誘発ラット舌前癌病変モデルの作製では、当初想定していた期間よりも長い時間が必要であり、現在は4-nitroquinoline 1-oxideの濃度を上げた実験を行っている。また組織学標本では定性、あるいは定量化が難しいため、PCNA、P53、NF-κBなどを用いて、ウエスタンブロッティングによるバンドの違いを比較検討中である。一方、食品からの化合物抽出に関してはフラボン類であるアピゲニンやルテオリンなどが候補に上がっており、引き続き、抗腫瘍活性を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
4-nitroquinoline 1-oxide誘発ラット舌前癌病変モデルの口腔粘膜にフラボン類であるアピゲニンやルテオリンなどを日常的に接触させ、前癌病変抑制効果や治療効果を組織学的に評価し、またPCNA、P53、NF-κBなどを用いたウエスタンブロッティングによるバンドの違いからもその評価を行う予定である。さらに化合物をタブレットや飲料、ジェル等の形態に加工し、口腔に直接作用させる新規医薬品の開発に繋げたいと考えている。一方、食品からの化合物探索も同時に進める予定であり、コメ、コムギ、ミソ、大豆以外の食品からの化合物抽出を念頭に置きながら研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
京都大学への大学院生派遣が半年程度遅れた点、また、4-nitroquinoline 1-oxide (4NQO)によるラット発癌モデルにおいて前癌病変が確認できるまでに数か月間かかった点などにより、次年度への使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
既に京都大学への大学院生派遣も完了して食品化合物の抽出が行われており、また4-nitroquinoline 1-oxide (4NQO)によるラット発癌モデルでの前癌病変の確認も終了していることから、実験の遅延は想定範囲内のものであり、今年度の研究は予定通りに行うことができる見込みである。従って、使用計画においては何ら問題はない。
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