悪性腫瘍の治療において転移の早期発見は重要で治療成績の向上につながる。近年、微小なリンパ節転移の判定にセンチネルリンパ節生検が行われて、その正確な診断が可能となり臨床で広く導入されている。この生検操作では術中のセンチネルリンパ節の検出のみであり、リンパ節の中の転移の有無は病理組織検査をするまで分からない。本研究の目的は深部にあるセンチネルリンパ節をTc-99mフチン酸シンチグラフィで検出し、その中の転移を近赤外蛍光で画像化して判定し、同時に光免疫療法でreal-timeに治療するtheranosticsの手法が可能か動物実験で検証することにある。これまでに免疫不全マウスにおいてセンチネルリンパ節をシンチグラフィで検出して、その中の転移EGFR発現腫瘍を近赤外蛍光(ICG)でイメージングすることができた。近赤外蛍光のイメージングプローブは標的/BG比が良好と考えられる、抗体よりも分子量の小さい、抗体類似物質affibodyを使用してきた。最終年度は昨年度に作成した光免疫療法のためのanti-EGFR affibody IR700 プローブを用いて実施した。theranostics としての光免疫療法実験は昨年度に引き続き免疫不全マウス頭部皮下に口腔扁平上皮癌細胞SASを移植した腫瘍で行った。anti-EGFR affibody IR700 プローブを移植腫瘍に局中して近赤外蛍光照射を行った。効果の判定はHE染色、免疫組織化学的にEGFR、Ki67などの発現を検討した。局中のために制限があったが近赤外蛍光照射により部分的な腫瘍増殖の抑制が認められた。小動物での実験で制限があったが、今後はより大型動物実験モデルで確認することが必要と思われる。本研究結果から初期の微小なリンパ節転移を非侵襲的な光免疫療法でtheranosticsを実施できる可能性の道筋を示すことができた。
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