研究課題/領域番号 |
15K11306
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西條 英人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80372390)
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研究分担者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30344451)
杉山 円 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90451814)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 成熟細胞 / 共培養 |
研究実績の概要 |
成熟細胞より分泌されると考えられる成熟および分化を促進する因子によるiPS細胞由来の細胞の分化及び成熟化を促進する検討の準備を進めた。 ヒト成熟細胞として使用する骨芽細胞を得るために、患者骨髄液より間葉系幹細胞(MSC)を単離培養し、骨分化誘導することで骨芽細胞とした。また、軟骨細胞は条件によっては石灰化するので、骨芽細胞の類似細胞として小耳症患者より耳介再建術時に廃棄された耳介より軟骨細胞を単離・培養した。 ヒトMSCの骨分化誘導と並行して、当研究室に常時ストックのあるヒト耳介軟骨細胞を用いて予備検討を進めた。これに先立ち、マウスiPS細胞の分化誘導による多能性の消失の評価および細胞の追跡を行うために、nanog-GFP-mouse iPS およびactin-GFP-mouse iPSの軟骨分化誘導とGFPの追跡を行った。結果、分化誘導によりnanog-GFPの発現は見られなくなった一方、actin-GFPの発現は持続したことが示された。これにより、マウスiPS細胞は多能性を消失しつつも生存し続けたことが示唆された。 マウスiPS細胞を①未分化②初期中胚葉③中胚葉④軟骨細胞に分化させ、ヒト耳介軟骨細胞と各種混合比にて軟骨分化培地で三次元共培養を実施した。結果、軟骨細胞に分化させたマウス細胞と30%以上のヒト軟骨細胞とを共培養したサンプルにおいてマウスコラーゲンの遺伝子発現の亢進がみられ、ヒト細胞がマウス細胞の分化・成熟を促進したことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光観察によるマウス細胞の分化度の評価および追跡が可能であるかを検証するために、①nanog-GFP-mouse iPS②actin-GFP-mouse iPSを軟骨細胞へ分化させた。結果、nanog GFPは分化が進むにつれて蛍光が弱くなり、最後には検出されなかったことから多能性が消失したことが示唆された。actin GFPは培養期間を通じて検出されたことから、蛍光による細胞追跡が可能であることが示唆された。軟骨細胞は、条件によっては石灰化するため、骨芽細胞に類似するものとして小耳症の耳介再建時に廃棄された患者耳介より軟骨細胞を単離し培養した。 マウスiPS細胞を①未分化②初期中胚葉③中胚葉④軟骨細胞へ分化させた。マウス細胞とヒト細胞を、各種細胞混合比でアテロコラーゲンに混和し、軟骨分化培地で培養した。培養期間は2週とし、mRNAを抽出してヒトおよびマウスコラーゲンを定量し比較した。結果、ヒト耳介軟骨細胞と軟骨分化させたマウス細胞の共培養によりマウスコラーゲンの発現が亢進した傾向がみられた。以上より、ヒト成熟細胞との共培養によりマウスiPS細胞由来の細胞の分化・成熟が促進されたことが示唆された。 ヒト骨芽細胞の準備として、患者骨髄液より骨髄間葉系幹細胞(MSC)を単離・増殖培養後、骨分化誘導培地にて骨芽細胞へ分化させた。 マウスiPS細胞を①未分化②中胚葉系③間葉系④骨芽細胞へ分化させた。 マウス細胞とヒト細胞の共培養に当たり、細胞混合比を①10万細胞:0万細胞②9万細胞:1万細胞③7万細胞:3万細胞④1万細胞:9万細胞⑤0万細胞:10万細胞としてそれぞれアテロコラーゲンに混和し、骨分化培地で培養した。培養期間は2週、4週、8週とし、各期間でmRNAを抽出して多能性マーカーや中胚葉系マーカー、間葉系マーカーおよび骨芽細胞のマーカーを定量し比較した。詳細は解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトMSC由来骨芽細胞とマウスiPS細胞由来細胞の共培養の結果の解析を進め、マウス細胞の分化を最も促進する、マウス細胞の分化度及び細胞の混合比を決定する。これに続いてヌードラットなどを用いたin vivoの再生骨作製検討の準備を開始する。並行して、ヒト細胞より分泌されると考えられる、成熟促進因子の同定のためのプロテオーム解析の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の想定より円滑に研究が進捗したため
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度以降の研究をより加速させるための費用に充てる
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