研究実績の概要 |
平成29年度は,これまでの結果をもとに埋植用の低結晶性炭酸アパタイト・コラーゲン複合体を作製し,その複合体をウサギ頭頂骨へ埋植して組織学的評価を行った.また,引き続き,骨再生医療の細胞ソースとして用いるiPS細胞の骨芽細胞への分化誘導を試みた. 低結晶性炭酸アパタイト・コラーゲン複合体のウサギ頭頂骨への埋植:低結晶性炭酸アパタイト顆粒の顆粒径は300-600 マイクロm(Sサイズ)と600-1000 マイクロm(Mサイズ)の2種類を使用した.コラーゲン溶液の濃度を3%とし,炭酸アパタイトとコラーゲン溶液の重量比は50%と65%として複合体を4種類(50S, 65S, 50M, 65M)作製した.低結晶性炭酸アパタイト顆粒とコラーゲン溶液を混和した後,専用の金型に充填し,凍結乾燥して,円柱状の低結晶性炭酸アパタイト・コラーゲン複合体を作製した. 複合体をウサギ頭頂骨に埋植し,4,8週後に摘出して組織学的評価を行った.骨欠損部に試料が緊密に埋植されている個体では骨形成は良好であったが,顆粒が骨欠損部外へ分散してしまった個体では骨形成が不十分であったことから,作製した複合体の操作性と安定性に問題があることが明らかになった.そこで,炭酸アパタイト・コラーゲン複合体に150℃で熱架橋を行った(h50S, h65S, h50M, h65M).熱架橋した炭酸アパタイト・コラーゲン複合体を埋植したところ,骨形成には影響はなく,操作性と安定性の改善が得られた. iPS細胞の骨芽細胞への分化誘導:理化学研究所から購入したヒトiPS細胞(HPS0002)を実験に用いた.まず,iPS細胞をマウス胎仔線維芽細胞(MEF)をフィーダーとして培養を行い,十分な細胞ストックを作成した.次いで,レチノイン酸を添加してiPS細胞を培養した後,骨芽細胞分化培地で培養して,骨芽細胞への分化誘導を行った.
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