研究課題/領域番号 |
15K11317
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
和田 圭之進 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (10533755)
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研究分担者 |
尾島 泰公 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (40403240)
渋谷 恭之 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90335430)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨再生法 |
研究実績の概要 |
これまでの臨床での結果から1壁~4壁性であれ、周囲に骨壁があることが重要であり、平坦な骨面に凸型に骨を造成することが最も困難と思われる。今回、われわれはそのような究極の条件下、すなわちウサギの頭蓋骨の平坦な部位に移植骨なしの骨造成が可能かどうかを検証し、もし可能であればどのような条件が必要かを実験で確認することとした。ウサギの頭蓋骨を左右に分け、両者の骨表面には骨を再生させる空間を作るべく、チタン製の円柱状の枠を設置することとし、これを同じくチタン製のネジを用いて骨面に固定する方法を考案した。しかしながら、チタン製円柱枠のサイズが大きい場合にはウサギの頭部の皮膚に褥瘡が生じてしまうため、円柱の直径と高さの調整を行う必要があった。次に培養骨膜の作製ができるまでの期間を利用し、また実験系全体としてのコントロール作成の意味も含めて、先のチタン製円柱内の組織を経時的に観察した。すなわち予定通りにウサギ頭蓋骨左右にチタン製円柱を設置し、骨表面には骨幹細胞が誘導できるようにドリルで骨孔を開け、一方には多血小板フィブリンを充填し、他方は何も挿入せずに、その両者を比較検討することとした。多血小板フィブリンは同じウサギの耳介静脈から血液を採取し、遠心分離機によりオペ直前に作成した。チタン製円柱設置後、1カ月、2カ月、3カ月、6ヶ月の経過観察期間をおいてからチタン製円柱内の組織を取り出し、HE標本を作製して光学顕微鏡下で観察を行った。すると両者ともチタン製円柱の高さの25%程度までは骨形成がみられたが、両者に違いを見出すことはできなかった。多血小板フィブリンが骨再生時の早い段階で役割を果たしている可能性も考え、チタン製円柱設置後の2週間後、1カ月後、2カ月後においてチタン製円柱内の組織を採取し、オステオカルシンによる免疫染色を行った。しかしながらその結果においても左右での違いを見出せなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養骨膜の作製においてコンタミなどがみられ、実験室の環境改善を余儀なくされたため、多大な時間を費やす結果となった。また、同時に行っていたウサギの実験においては、使用予定であったゼラチンスポンジが強度的に脆弱であったため、これを補う必要があり、頭蓋骨にチタン製円柱枠を設置する方法を提案した。しかしながらチタン製円柱枠のサイズが大きいと頭部の皮膚の褥瘡ができて感染を生じてしまうため、その直径や高さを調整する必要があった。ウサギの骨形成過程を観察するうえにおいてはチタン製円柱枠設置後少なくとも6ヶ月間は必要と考えたため、その期間を通じて褥瘡ができないサイズを調整するために、こちらも多くの時間を費やす必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
インプラントを埋入する際、下顎管や上顎洞が近接する症例では長いインプラント体を使用することはできない。しかしながらインプラント長はわれわれの以前の研究結果から10ミリ以上は必要と考えており、そのためにはインプラント埋入前に骨造成を行う必要がある。先にも述べたように、チタン製円柱の高さの25%程度までは骨形成を認めており、一方、皮膚側には全く骨の新生を認めなかったことから、皮膚側より早期に線維芽細胞などが侵入していると判断し、皮膚側にコラーゲンメンブレンを設置する系を提案した。既に臨床では骨表面に多血小板フィブリンを設置し、そのうえに上記の目的でコラーゲンメンブレンを設置、さらに粘膜の創傷治癒促進のためにサンドイッチ状に2枚目の多血小板フィブリンを外周に設置してから粘膜を縫合閉鎖する方法を実施しており、これを応用する方向である。また多血小板フィブリンにはPDGF-ABやTGF-β、IGF-1、EGF、VEGFなど、一般的に多血小板血漿に含まれている成長因子に加えて、フィブリンの物理的な骨への足場としての働き、またその成長因子の徐放材としての機能が期待されている。これらに培養骨膜を合わせれば早期の骨新生が期待できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
スペースメーキングのためのチタン製円柱枠をウサギ頭蓋骨に設置したところ、想定外に褥瘡が生じたため、チタン製円柱枠のサイズ変更を余儀なくされた。そのために動物実験が滞り、予算を予定通りに執行することが困難となった。
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次年度使用額の使用計画 |
チタン製円柱枠の適切なサイズを実験により確認し、以降は順調に動物実験が行えており、今後は予定通りに研究が行えるため、次年度使用額に関して順調に執行可能と判断できる。
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