研究課題
抗癌剤の5-FUの投与後の口内炎増悪モデルラットの病態生理学的状態を評価した。またTRPチャネルの自発痛と機械痛覚過敏への関与と薬物の効果を検討した。5-FUは食欲不振、体重減少、白血球減少を引き起こしたが、健常口腔粘膜における疼痛関連行動には直接影響を及ぼさなかった。5-FU自体は口内炎は引き起こさなかったため、最終投与から2日後に、酢酸処理にて下唇粘膜部に口内炎を誘発した。生食投与群と比較して5-FU投与群では口内炎部への白血球浸潤減少、細菌コロニー数の増加、口内炎の肉眼的な増悪が認められた。また自発痛と口内炎部の機械痛覚過敏は増悪した。抗菌薬にて自発痛と機械痛覚過敏の両方が抑制された。自発痛はCOX阻害薬インドメタシン、TRPV1阻害薬 SB-366791により抑制されたが、TRPA1阻害薬HC-030031は無効であった。一方、機械痛覚過敏は、HC-030031により抑制されたが、インドメタシン、SB-366791は無効であった。TRPA1の機械的感作を引き起こす要因を調べるため、細菌毒素のLPS、 fMLFを健常粘膜に局所投与したところ、TRPA1を介した機械痛覚過敏を引き起こした。細菌毒素の阻害薬としてLPS 阻害薬ポリミキシンB 及びfMLF受容体FPR1 拮抗薬 Boc MLFを5-FU群の口内炎部に局所塗布したところ、機械痛覚過敏は抑制された。さらにポリミキシンBはプロスタグランジンE2産生を抑制し、自発痛も抑制した。またTRPチャネル拮抗薬のルセニウムレッド及びTRPV1/TRPA1チャネルポア通過麻酔薬QX-314の局所塗布は、自発痛と機械痛覚過敏を抑制した。5-FUによる白血球減少が口内炎部位への細菌感染を増加し、COX経路を介した持続的なTRPV1活性による自発痛の増悪と、細菌毒素によるTRPA1機械的感作を介した機械痛覚過敏の増悪をもたらす。
3: やや遅れている
以上の結果から、上記の機序とエンドセリンの関連性を追求する必要があるため。
口内炎の疼痛発生とエンドセリンの関連性を調査する必要がある。
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PAIN
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