研究実績の概要 |
平成27年度は左側顔面慢性疼痛(眼窩下神経結紮モデル)を使用し、ボトックス高濃度が頭部引っ込め閾値を上昇させることを行動学実験により証明した。これらの影響は、三叉神経節において、SP、CGRPなどの神経ペプチドの放出抑制、またTRPV1などの抑制がおこり、結果として、二次ニューロンにおけるpERKの発現(興奮)を抑制し、疼痛を制御できることも証明した。本年度はintact ratの状態ではどのようにボトックスが影響するのかを調べた。intact ratsでの侵害受容の実験は行動学実験で評価した。high-dose BoNT-A (10ul)またはsaline (10ul)をラットの顔面(wiskerpad skin)に皮下投与し、2週間後に機械刺激検査,痛覚検査(draw score)を測定した。 high-dose BoNT-A群では、saline群と比較して、感覚の低下は認めたものの、有意な差はみられなかった。また免疫組織学的実験では、CCI後2週間で得られた標本ではDAB染色でpERKの陽性細胞を認めた。また蛍光特殊染色(P2X3)でも、ニューロン細胞膜に陽性細胞を認めた。さらに顔面皮膚(末梢)のC線維特異的に染色できるTubulin染色を行った。CCI群に比較し、high-dose BoNT-A群の方が、わずかな陽性反応を認めたが、明らかな有意な差はなかった。これはボトックスが顔面皮膚のC線維を変性・委縮している可能性があると考えられる。以上のことから、ボトックスは三叉神経節、二次ニューロンでの影響に加え、末梢でのC線維への変性により感覚の低下をもたらしていることが示された。
|