研究課題
16名のバーニングマウス症候群(以下BMS)の患者(40-69歳の女性)と16名の健康女性(40-69歳)においてインタークロス社製Peltier装置NC200を用いて右側手掌および右側下口唇にPeltier素子を当てることで,Baseline32℃32秒を加えた後に非侵害刺激40℃32秒,Baseline32秒,侵害熱刺激48℃32秒,Baseline32秒の順で刺激を繰り返し,その間,T2強調画像を撮像した。①口唇刺激,②手掌刺激により,それぞれア)侵害刺激時,イ)非侵害刺激時のvoxel値を記録し,SPM8,MatLab2009bを用いて,a) 侵害刺激時-非侵害刺激時(侵害刺激による特異的脳活動),b) BMS群-対照群(BMS増強部位)ならびに対照群-BMS群(BMS減少部位)を求めた。また,非侵害刺激32秒と侵害刺激32秒をそれぞれ前半の16秒と後半の16秒に分け,前半と後半における脳活動の差異を検討した。さらに,非侵害刺激と侵害刺激の1回めから4回めの各刺激によって引き起こされた脳活動の差異についても比較検討した。その結果,BMS群では,対照群に比べて口唇刺激時に有意に後半の刺激で脳の前方部位(前頭前野,運動前野,帯状回,島)の活動が増強しており,時間的加重が認められた。一方,1回めの刺激(侵害刺激-非侵害刺激)と4回めの刺激(侵害刺激-非侵害刺激)を比べると,対照群では帯状回に活動の抑制が見られたのに対し,BMS群ではこの抑制が見られなかった。すなわち,侵害刺激に対する慣れが生じないことがわかった。これらのことは,本来健康な人が有している侵害刺激に対する脳の調節機構がBMS患者では障害されていることを示す。
2: おおむね順調に進展している
初年度は,これまでの経緯を受けて,BMS患者と健康成人女性における侵害刺激に対する脳の時間的反応特性を明らかにした。特に,従前の研究で明らかだったBMS患者の脳の反応が,口唇刺激で手掌刺激時よりも活動が弱かったこと,BMS患者では健康対照に比較して侵害刺激に対する反応が増強していたことの原因として,時間的加重や慣れの欠如といった,脳における疼痛の調節機構の破綻があることが明らかになった。これらの事実は,BMS患者における末梢からの痛み刺激の処理機構に何らかの障害が生じていることを示すものである。
今後は,この破綻した痛みの調節機構に対してどのようなアプローチが有効かについて検討を行ってゆく。すでにチェアサイドでの検討において,ガム咀嚼や空咀嚼(擬似咀嚼)によって,BMS患者の自覚疼痛強度が減少するとのデータを有しているので,運動系の賦活が何らかの関与を行っていることが示唆される。この点をfMRIで観察する予定である。
当初,画像処理用のDual CPUを有する高処理能力のワークステーションを購入予定であったが,このワークステーションの発売が予定より遅れており,これを購入するために平成27年度内での購入を見送った。平成28年度には発表される予定であるので,発表され次第,購入する予定である。
現在,画像処理は現有のSingle CPUのPCで演算を行っているが,今年DualCPUのワークステーションを購入する予定であり,このワークステーションが入れば,演算能力が数段向上し,Free Surferを用いた画像処理でも1日に2名分の演算が可能となる。夏までには購入して研究に用いる予定である。
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J Oral Sci
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doi:10.1016/j.job.2014.09.001
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