研究課題/領域番号 |
15K11326
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
今村 佳樹 日本大学, 歯学部, 教授 (90176503)
|
研究分担者 |
篠崎 貴弘 日本大学, 歯学部, 講師 (50339230)
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 教授 (60160115)
野間 昇 日本大学, 歯学部, 准教授 (70386100)
岡田 明子 日本大学, 歯学部, 准教授 (10434078)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | バーニングマウス症候群 / Voxel Based Morphometry / 灰白質体積 / 帯状回 |
研究実績の概要 |
代表者らは,これまでにバーニングマウス症候群(BMS)患者と健康対照において,侵害熱刺激に対する脳活動を比較し,特に内側系の帯状回を中心に,刺激の反復による馴れが生じることを報告した。今回の研究では,この中枢神経の特異的な反応が脳の器質的構造に関係しているのかの検討を行った。14名の女性の舌痛症患者と年齢の一致した16名の健康女性をコントロールとした。そしてこれら対象者に灰白質体積を日本大学医学部付属病院にてMRIで撮像した。解析には,MATLAB2017aを用い,灰白質体積はStatistical Parametric Mapping12(以下SPM12)を用い,Voxel-based morphometry(以下VBM)により評価した。評価には,年齢,病脳期間,疼痛VASスケールを共変量とした。その結果,BMS患者群はコントロール群に比較して背側後帯状皮質,背側前帯状皮質,前運動野,扁桃体,縁上回,前頭前野背外側に増大が見られた。一方,縁上回では減少が見られた。次に,BMS群における灰白質体積の変化と年齢・病脳期間・疼痛VAS値との相関を示す領域を求めた。年齢との相関では,中側頭回,角回に,病脳期間では前頭眼野,嘴峰,前頭前野背外側,前運動野に正の相関が見られた。疼痛VAS値では相関の見られた領域は無かった。すなわち,従前の研究で機能異常が観察された,痛みの修飾機構に関わる内側系の疼痛回路に当たる部位に灰白質の増大が見られた。帯状皮質や扁桃体は疼痛や認知に深く関わっており,BMS患者群で帯状皮質や扁桃体に灰白質体積の変化がみられたことは,BMSでは疼痛認知の修飾作用に何らかの影響が及んでいることが考えられる。また,脳体積との相関では,年齢や病脳期間に相関が見られ,これらの領域は疼痛の抑制や知覚に関わる領域であるため,体性感覚に変化が生じたと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究は,すべて順調に進んでおり,研究発表も予定通りに行ってきている。海外での評価も相応に受けていると考えている。但し,研究協力者の阿部修教授が,日本大学医学部放射線学系から東京大学大学院大学放射線医学に移籍となったため,研究協力機関の環境設定(倫理員会の承認を含む)にしばらく時間が必要となることが考えられる。それに伴い,本年度の画像データのの収集がもしかしたら予定通りに行えなくなる可能性も否定できない。その場合は,できる範囲で日本大学医学部放射線学系の協力を得てデータの収集に努める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本計画の最終年にあっては,BMSの疼痛修飾における脳活動の変調がどのような機序で起こるのかをさらに解き明かすために,介入を加えた際の脳活動の変化について検討を行う予定にしている。具体的には,ガム咀嚼によってBMS患者では疼痛の軽減が見られることが多く,この行動が脳にどのような変化を与えているのか,同様に疼痛の軽減をもたらすことが知られている,自律訓練法によってもどのような脳活動の変化がみられるのかを検討して,疼痛の修飾に何が関わっているのか,BMS患者の疼痛調節機能にどのような不都合が生じているのかを検討したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた,国際学会での発表が,日本で開催された国際学会に限ったため,海外への渡航費用が発生しなかったので繰越金が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年には,疼痛を修飾させるための介入として咀嚼や自律訓練法を導入することを計画しており,被験者への謝金や,その際の被験者の血液中のホルモンの変動等も併せて検討したいと考えている。これに伴う外部ラボへの標的ホルモンの測定等を委託することにしているため,このための資金も必要である。また,研究成果を発表するために学会出張も計画しており,その資金としても活用したい。
|