本研究では,破骨前駆細胞が骨微小環境内で遊走,定着し分化する過程での細胞運動能に関するTGF-βおよびRANKLの影響を検討した.【方法】細胞はマクロファージ系破骨前駆細胞RAW264.7細胞(以下RAW細胞)を,薬剤はTGF-β1,SB431542(TGF-β1型受容体キナーゼ活性阻害剤)およびRANKLを使用した.RAW細胞を各種薬剤によって処理し,破骨細胞様細胞への分化を確認した.また,各種薬剤を24時間および72時間作用させたRAW細胞の細胞運動能の変化をmigration assayで検討し,RhoA,Rac1,Cdc42タンパク発現の変化をウエスタンブロット法にて検討した.さらに,各種薬剤を24時間および72時間作用させたRAW細胞の細胞接着能の変化をadhesion assayで検討した.【結果】破骨細胞様細胞への分化傾向はTGF-β1+ RANKL処理が最も高く,SB431542処理により分化は抑制された.24時間作用後のmigration assayでは,TGF-β1処理で細胞運動能が亢進し,SB431542処理により抑制されたが,72時間作用後ではTGF-β1処理で細胞運動能が低下し,SB431542処理により亢進した.また,24時間作用後では,TGF-β1処理によりRhoA,Rac1タンパクの発現は上昇したが,72時間作用後ではTGF-β1処理群のRhoA,Rac1,Cdc42タンパクの発現は減少した.24時間作用後のadhesion assayでは,TGF-β1作用群は接着能が低下し,その傾向はRAKLを併用作用させても同様であった.72時間作用後では,TGF-β1作用群の接着能の低下は回復傾向を示した.
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