研究課題/領域番号 |
15K11335
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福永 智広 東北大学, 大学病院, 講師 (70362994)
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研究分担者 |
山本 照子 東北大学, 歯学研究科, 名誉教授 (00127250)
北浦 英樹 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (60295087)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯学 / 歯の移動 / 先天異常 / Runx2 |
研究実績の概要 |
鎖骨頭蓋異形成症は、口腔・顎顔面領域に異常を伴う先天異常であり、永久歯の萌出遅延、多数歯埋伏、歯の移動遅延のため、矯正治療が非常に困難である。その原因遺伝子として骨芽細胞の分化に必須の転写因子であるRunx2が同定されているが、同症の口腔・顎顔面の異常に関する分子レベルでの病態や最良の治療法については未だ解明されていない。本研究では、鎖骨頭蓋異形成症患者の歯の移動遅延の原因を分子レベルで解明し、同症に対する新たな治療方法の開発に繋がる分子基盤を確立することを目的に、メカニカルストレスで誘導される骨吸収に着目して、鎖骨頭蓋異形成症の病態モデルであるRunx2ヘテロ欠損マウスを用いて、矯正的歯の移動実験ならびに培養細胞を用いたin vivo,in vitroでの分子メカニズムの解析を行う。本年度は、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウス大腿骨、脛骨より骨髄細胞を採取後、培養し、骨髄間質細胞を分離した。分離した骨髄間質細胞をシリコンチャンバーに播種し、12%の伸展力を負荷し、経時的にアルカリフォスファターゼ(ALP)活性、オステオカルシンmRNA発現、カルシウム産生量を測定した。野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウス由来の骨髄間質細胞を同様に培養し、伸展力を負荷しない群をコントロールとした。その結果、非伸展群では、ALP活性、オステオカルシンmRNA発現、カルシウム産生量のいずれにおいても、野生型とRunx2ヘテロ欠損マウスで有意差を認めなかった。ところが、伸展力を負荷すると、野生型マウスはRunx2ヘテロ欠損マウスに比べ、ALP活性、オステオカルシンmRNA発現、カルシウム産生量はより初期段階に上昇し、その発現量も大きかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから骨髄間質細胞を分離培養し、シリコンチャンバーを用いた12%の圧縮力を負荷するモデルを作成できた。さらに、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから骨髄間質細胞を培養開始から28日間、観察可能となった。その結果、in vitroにおいて、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウス由来細胞に対するメカニカルストレス応答性を解析することが可能となった。しかしながら、本年度に予定していたRunx2と細胞増殖の関係についての検討は達成できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウス由来細胞を用いたin vitroにおけるメカニカルストレス負荷モデルを用い、細胞の増殖・分化能に対するRunx2の機能をmRNAやタンパク質の発現変化を解析することで、より詳細に検討する。さらに、平成27年度に確立したin vivoでの矯正的歯の移動モデルを用いて、骨リモデリングに関与する細胞の増殖・分化を解析し、in vitroで得られた結果をin vivoでも確認する。得られた結果をまとめ、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はin vitroでの実験を中心に計画をし、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウス由来の細胞に圧縮力を負荷する研究を行った。当初の予定通りシリコンチャンバーを用いた細胞への圧縮力負荷モデルを作成することができたが、実験の進捗にやや後れが生じ、本年度に予定していた野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウス由来細胞を用いたin vitroでの細胞増殖の検討実験を行うことができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
シリコンチャンバーを用いたin vitroでの細胞への圧縮力負荷実験を行い、それらの細胞のDNA量を測定するとともにタンパク質を抽出し、ウエスタンブロット法による定量解析を行い、Runx2のメカニカルストレスに対する細胞増殖に対する機能を検討する予定である。
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