研究課題
唇顎口蓋裂患者の顎裂部に対する骨修復は歯科、整形外科分野における重要な課題である。 Tissue Engineering による組織の再生 は、細胞の足場(scaffold)、細胞、増殖分化因子の3つの重要な役割に加え、各種増殖分化 因子の放出期間をコントロールする徐放化 キャリア(担体)の併用が必須である。リン酸化プルランは、骨や歯に対して強固に接着し、生体内で吸収されることから、接着性を有 する人工骨の材料としての実用化が期待されている。また、iPS 細胞から骨芽細胞への分化や、組織幹細胞としての性質を備えている 神経堤様細胞(NCLC)への 誘導が報告されている。本研究は、iPS細胞から誘導した骨芽細胞や神経堤様細胞と徐放化キャリアで あるリン酸化プルランが骨再生へ及ぼす影響を動物実験にて検証する。平成29年度は、ビーグル犬の顎裂モデルの作製および歯の移動実験を行った。ビーグル犬の飼育、全身麻酔、歯の移動装置の作製および装着、歯列印象の採取、歯列模型の作製などの技術を習得した。現在12か月齢雄性ビーグルを4頭用い、顎裂部に再生誘導補填材の埋入を行い、再生骨内へ歯の移動を行っているところである。研究期間全体の成果として、iPS細胞から神経堤様細胞(NCLC)の誘導に成功したこと、マウス頭蓋骨欠損モデルにおいて、材料埋入21日後、リン酸三カルシウムおよびリン酸化プルランを埋入した群の CT 値が他の群(対照群、リン酸化プルランのみ埋入した群)と比較して高い傾向があるという結果が得られたことなどがあげられる。本研究成果から、リン酸化プルランを徐放化キャリアとすることで、細胞の足場と増殖分化因子の徐放化を可能とした新規骨組織再生誘導が実現できる可能性が示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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