歯の移動に伴う痛みあるいは不快感は矯正治療における重大な副作用の一つであり、これから治療を受けようとする患者にとって大きな関心事でもある。そのため、この痛みの性質やメカニズムを明らかにすることは歯科矯正学において重要な課題であるが、従来の研究では主観的評価による手法が主に用いられており、未だその特徴が十分に解明されているとは言い難い。そこで本研究では、非侵襲的な脳機能イメージング法である脳磁図(MEG)とMRIを用いて、歯の移動に伴う痛みを脳の体性感覚野の反応として定量的、客観的に捉えることを目的とした。 最終年度には、ボランティア被験者に対し、右側上下第一大臼歯近遠心にセパレーションエラスティックを挿入し、エラスティック挿入前・挿入直後・挿入から24hr後・撤去直後に申請者らが製作した歯根膜機械刺激装置を用いて機械刺激を付与した後、SEF(Somatosensory Evoked magnetic Field:体性感覚誘導磁場)計測を行ない、主観的評価とともにデータの解析を行った。 上記を含め、補助事業期間全体を通じて実施した研究の成果として、まずは先端部に赤色光を発する光ファイバーが装着され、対象物に接触すると光が遮断されるように設計された歯根膜機械刺激装置の製作を行った。その後、同装置を利用し、歯根膜の機械的刺激によるSEFの特徴を明らかにした。上述の通り、本研究において、歯の移動に伴う痛みを脳の体性感覚野の反応として定量的、客観的に捉えることを可能とする評価系を構築することができた。
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