研究課題/領域番号 |
15K11339
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藪下 忠親 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (40420260)
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研究分担者 |
小海 暁 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (50431937)
加藤 千帆 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (80706987)
沖原 秀政 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (80754960)
小野 卓史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30221857)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鼻呼吸障害 / 鼻閉 / 記憶学習機能 / 海馬 / BDNF / Trk B |
研究実績の概要 |
呼吸機能障害は、鼻咽腔疾患による鼻気道内の機能的・構造的問題によって呼吸、発音、嚥下などの生体にとって重要な機能に障害を誘発する。鼻閉(鼻呼吸障害)は頻度の高い上部気道疾患であり、ウイルス性・細菌性などの二次性の上部気道疾患や、顎顔面発育および高次脳機能への影響を誘発することが知られている。鼻呼吸障害を患う発育期の児童は読解力、数学力、working memoryが劣り、また、不十分な睡眠と呼吸機能障害を示す児童には学力の低下が認められるといった、呼吸機能障害と記憶・学習を司る海馬、高次脳機能との関連性についての報告が見受けられる。記憶学習機能障害は中枢神経系として海馬がその役割を担っている。海馬の成長・発達により記憶・学習能力は向上するが、それには、Neurotrophin familyの一種であるBrain-derived neurotrophic factor (BDNF:脳由来神経栄養因子)が重要な役割を果たしている5。BDNFは成長期および成人の末梢・中枢神経系においてニューロンの結合性を制御し、ニューロンの分化・生存を促進すことにより高次脳機能を獲得する。BDNFはTyrosine kinase B (TrkB) receptorと親和性が高く、BDNFとTrkBの結合により中枢神経系の神経細胞の成長・シナプスの機能が発達し、記憶・学習能力は向上する。口腔領域の機能障害が記憶・学習機能を司る海馬の機能変性に与えるメカニズムに関して、行動学的・生化学的・組織学的に総合的に評価することを目的とした。28年度は鼻呼吸障害マウスを用いて、行動実験、Western blotによる生化学的評価、神経細胞染色による組織学的評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
行動学的、生化学的、組織学的実験を開始したが、鼻呼吸障害がもたらされていることを明らかとするSpO2の測定方法に不備があった。毛の色により酸素飽和度にばらつきが大きく、鼻呼吸障害のモデルの作成の成否が判断できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
白毛のマウスは酸素飽和度測定に適していたため、そのモデルを用いて、モデルを作成している。そのモデルを用いて、27年度に確立している、実験系により、総合的に評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
鼻閉による認知機能への影響を調べるため、行動実験を一つ追加する。さらに鼻閉によるストレスの影響の有無を調べるため、血液中のストレスマーカーであるコルチゾールの量を測定することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
BALB/C雄性8日齢に鼻閉を行い、15週齡にて行動実験として受動回避試験、T字迷路を行う。その後、SpO2の測定と採血を行い、灌流後海馬を取り出す。採血した血液より血清を分離しコルチゾールの量を測定する。右脳はwesternblottingによりBDNFとTrkBとp44/42erkの蛋白量を比較、左脳はHE染色により海馬CA1、CA3領域の錐体細胞数を数える。
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