研究課題/領域番号 |
15K11344
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松本 芳郎 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (20292980)
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研究分担者 |
細道 純 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00420258)
小野 卓史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30221857)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯根吸収 / 歯根形成 / 歯の移動 |
研究実績の概要 |
ラット下顎切歯に平行に設置した絶対的固定源の切縁側から50gfのコイルスプリングにて下顎第一臼歯を近心咬合面方向に牽引して、歯科矯正学的な歯の移動に伴う根尖部周囲の歯根吸収モデルを作製した。対照群と比較して、8日・15日間移動群では、下顎第一臼歯遠心根遠心面の根尖部付近には有意に大きな吸収窩が形成された。実験群の同部位歯根膜には、シクロオキシゲナーゼ-1陽性細胞の増加は認められなかったが、TRAP陽性破骨細胞ならびにインターロイキン-1、インターロイキン-6、腫瘍壊死因子(TNF)、シクロオキシゲナーゼ-2、プロスタグランジンE2の各陽性細胞が、対照群に比べ有意に多く認められ、下顎の歯の移動に伴う根尖部周囲の歯根吸収にも、これらの炎症性サイトカイン等が関与していることが明らかとなった。 また、乳歯歯根吸収ならびに永久歯萌出が認められる生後24か月齢から29か月齢のウシの下顎前歯部の形態学的計測、X線写真・コーンビームCT観察における詳細な解析を行った。その結果、第4切歯歯小嚢による吸収の前に、歯槽骨との近接に伴う第4乳切歯歯根遠心側の吸収が生じることがあった(27/110)。また、第3切歯歯小嚢により第4乳切歯歯根近心側の吸収が生じることがあり(2/110)、異所萌出永久歯による隣在永久歯の歯根吸収との類似性が示唆された。 さらに、短期間の歯の移動の歯根形成に対する影響を明らかにすることを目的に、生後21日齢と28日齢のラットの上顎第一臼歯と第二臼歯を相反的に3日間移動し、35日齢時の歯根形成状態をマイクロCTにて撮影し、第一臼歯近心根歯根長を計測した。その結果、歯根形成が旺盛な生後21日齢では対照群と比較して歯根長に有意差は認められなかったが、歯根形成がやや鈍る28日齢での歯の移動では歯根長が有意に減少した。今後さらに詳細な検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アレルギーと歯根吸収に関する検討では有意差のない実験結果に伴う計画の修正が必要になったが、歯根吸収の実験系における炎症性サイトカインの局在に関する論文の掲載が決まり、乳歯の歯根吸収モデルにおける検討についても論文の投稿を終えた。さらに歯の移動の歯根形成に対する影響に関する検討についても、学会発表を行う予定となり、新たな計画に従い研究活動は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、当該研究費により、次の検討を行う方策である。 根未完成歯と根完成歯の移動に伴う歯根形成ならびに吸収と関連因子の動態を明らかにするため、21・28・35日齢での歯の移動と保定を行い、歯根形成量・吸収量の差異の有無をマイクロCTにて経時的に定量評価する。また、歯根形成・吸収の差異、細胞増殖能の変化、オステオポンチン等の形成系タンパクの局在を組織学的・酵素組織化学的、免疫組織化学的に検討する。さらに、in situ hybridization法により、各種形成系タンパクのmRNAの発現の差異を、根未完成歯・根完成歯の移動において比較検討する。以上の結果をまとめ、学会発表ならびに論文報告を行う。 また、現在投稿中の論文については、要請に基づき適宜修正を行い、掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
アレルギー疾患モデルにおいて明らかな歯根吸収の増加が認められないという、研究開始当初では想定できなかった結果による研究活動の一時遅延が主な要因で次年度使用助成金が生じ、国内研究発表ができなかったことなどでも生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
1)旅費・謝金等を用い生理的な乳歯歯根吸収に関する論文報告ならびに永久歯萌出機構に関する国内学会発表と論文報告を行う。 2)歯根吸収を評価できる歯根形成期並びに完成期ラットの歯の移動モデルに関する検討に消耗品ならびに謝金を使用し、国内学会発表を行う。
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