研究課題/領域番号 |
15K11349
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
八木 孝和 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 講師 (10346166)
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研究分担者 |
宮脇 正一 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (80295807)
乾 明夫 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (80168418)
浅川 明弘 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (10452947)
安宅 弘司 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任講師 (30563358)
前田 綾 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (10457666)
植田 紘貴 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (10583445)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ブラキシズム / 電気生理 / 脳腸相関 / ストレス |
研究実績の概要 |
顎口腔機能のパラファンクション(特にブラキシズム)制御は、睡眠・摂食障害に対する国民のQOLの向上に役立つことから、喫緊の課題である。顎口腔機能のパラファンクションとストレスとの関係は示唆されてきているが、未だ不明な点が多い。本研究は、視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)と脳腸相関の顎口腔機能への影響を検証し、その調節機能の一端を解明することを目的とした。 今年度は、ストレスや脳腸相関に影響を与える脳・消化管ペプチドの脳内投与実験を行い、顎口腔機能活動と自律神経活動を電気生理学的手法を用いて記録する研究基盤の構築を行った。また、各臓器へのストレスに対する標的因子の探索目的で、メカニカルストレスに対する骨組織の応答実験を行った。また、糖尿病モデルマウスを用いて疾患に対する機能性食品成分の影響を調べた。さらに、ヒトの顎口腔機能を検証するために、骨格性Ⅲ級患者に対する外科的矯正治療の影響について疫学的な検証を行った。 実験では音に対するモデル動物の行動への影響が大きいため、実験中の観察箱周囲での操作音などの外部音を遮断する目的で、遠隔操作システムを構築する等の外部環境を整備した。次に、ブラキシズムのモデル動物として用意したモルモットに対して、筋電図(咬筋・顎二腹筋)・脳波・心電図を計測できる電極を装着し、さらに、脳内にストレス関連ペプチドとその拮抗薬を投与して、自由行動下での観察を行った。その結果、モルモットを用いた実験において、顎口腔機能として、咬筋筋電図活動の解析から、ストレス関連因子に対して、コントロール群と比較して、有意な活動の上昇を示した。また、メカニカルストレスに対して頭蓋骨の骨形成が促進することが得られた。さらに、機能性食品成分には糖尿病改善に寄与する可能性が示され、ヒトでは顎顔面の骨格性変形に対する外科的改善によって、顎口腔機能が改善する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験系の整備・実験は概ね順調に進展しているが、動物の搬入業者において、Bordetella bronchiseptica が検出されたことため、施設および使用機器の消毒・滅菌および一定期間の使用中止を余儀なくされ、また、実験施設の整備工事などが必要となり、当初計画と比較して、一部の実験において開始時期が遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
脳・消化管ペプチドの脳内投与による顎口腔機能への影響を検証するために、顎運動に寄与する筋(咬筋・顎二腹筋)からの筋電図と、同時に心電図・脳波を計測しトレンド解析を進める。また、電気生理学的検証では、電極の状態やストレスに対する感度等、個体差が大きいため、個体数を増やす予定である。また、ストレスに対する臓器内のストレス関連遺伝子の発現を検証し、視床下部の脳スライス切片から、ストレス関連タンパクを同定し、定量解析する。また、心理的および身体的ストレス負荷に対する応答を検証するために、コミュニケーションボックスの利用と食道下部への酸暴露を計画する予定である。また、ストレス緩和という観点からアロマオイルなど嗅覚を通じたストレス緩和の影響を検証する。さらに、メカニカルストレスに対する応答に対する骨組織の応答に関する遺伝子レベルの検証を行う予定である。一方で、遺伝子解析を進めるためには、各種抗体が必要だが、モルモットは抗体が少なく、装置装着時に死亡しやすいことから、ラットなどの使用を検討する予定である。また、一部のデータについては海外雑誌に投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた機器が予定していた金額より安価になったことと、本年度に行う予定であった実験が予定の実験数まで到達しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度実験では、電極の状態やストレスに対する感度等、個体差が大きいため、引き続き個体数を増やす予定である。また、ストレスに対する臓器内のストレス関連遺伝子の発現や視床下部を中心とした脳組織切片を用いて発現タンパクの検証を行うため、網羅的に遺伝子発現を検索する必要があるため、数種類の試薬を購入予定である。
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