研究課題
本研究課題では、精神的ストレスと顎口腔系のパラファンクションとの関係を解明するために、研究代表者らは視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)の活動性及び脳腸相関を変調させることにより生じる顎口腔系の機能の変化を調べている。前年度に引き続き、齧歯類における咀嚼筋(咬筋)筋電図・脳波及び実験ケージ内の映像を記録し、ストレス因子である副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(corticotrophin releasing factor; CRF)を脳内投与し、その影響を解析した。その結果、明期にCRF(1.0 nM(10 μL))を側脳室内へ投与することにより、咀嚼筋筋電図活動は投与直後から約3~6時間にわたり著しく低下、その後は逆に異常亢進の傾向を示し、投与後24時間の総筋活動量としては増大することが判かった。また、対照実験(人工脳脊髄液のみ)でみられた咀嚼筋活動量の日内変動が不明瞭であった。更に、CRF投与により咀嚼筋活動が低下している時間帯に一致して、脳波の徐波(δ波・θ波)成分が増加し、通常の明期・暗期でみられる各周波数成分構成比の周期的変動が認められなくなり、正常な睡眠-覚醒リズムが乱されることが示唆された。CRF投与後に灌流固定した脳の薄切標本を抗c-Fos抗体による免疫染色を施すと、三叉神経中脳路核の近傍にある橋結合腕傍核(parabrachial nucleus; PN)にc-Fos蛋白が強く発現していた。PNは、上位脳-脳幹間の架け橋的役割を演じているだけでなく、情動への関与が示唆されている。以上から、CRFの脳内投与によって、一時的に正常な睡眠-覚醒リズムが乱れて、咀嚼筋活動も低下するが、その後睡眠-覚醒リズムは正常に近いものへ回復していくものの、咀嚼筋活動は異常亢進を示すという二相性の変化を示し、初期の応答の発現にはPNの活動が関わっていることが想定された。
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Orthodontic Waves
巻: 77 ページ: 57-65
10.1016/j.odw.2017.12.001
http://w3.hal.kagoshima-u.ac.jp/dental/kyousei/clinic/Orthodontics/research.html