研究課題
本研究の目的は、上下顎骨の劣成長に起因する睡眠時無呼吸と胃食道逆流の罹患率を横断的に調査し、外科的矯正治療による顎顔面形態の改善に伴う咽頭気道 の拡大と咬合の改善が睡眠時無呼吸と胃食道逆流に及ぼす効果を縦断的に調べ、解明することである。我々の予備実験によると、咬合接触面積や咬合力が小さく、下顎下縁平面の開大した不正咬合患者では睡眠呼吸障害や胃食道逆流症状が多く認められることが既に確認されている。さらに最近我々は、小下顎症に起因する咽頭気道の閉塞により閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を発症している患者に対して、下顎骨延長術を行うことで咽頭気道が拡大し、睡眠中のApnea Hypopnea Index(AHI)と動脈血酸素飽和度も改善し、外科的矯正治療が睡眠呼吸障害の根本療法として有効であることを示した。睡眠時無呼吸患者において、肥満、アレルギー性鼻炎といった鼻疾患、アデノイド肥大等の睡眠時無呼吸の主要なリスクファクターを排除した場合、上顎歯列 の狭窄や小下顎症の患者が多いことが予想される。また、上顎骨の外科的側方拡大や下顎骨延長術により咽頭気道や口腔容積が拡大することで睡眠時無呼吸が改善することも予想される。しかし、上顎劣成長や下顎劣成長を呈する患者に対して、上顎骨や下顎骨の前方移動を計画することが少ないことに加えて、睡眠時無 呼吸の確定診断に必須の標準睡眠時ポリグラフ検査や、胃食道逆流症の確定診断に必須の内視鏡検査は身体的負担が大きく、被験者の獲得が困難である。そこで、鼻腔の開存性や通気性と顎顔面形態との関連を横断的に調査するため、2017年度から音響鼻腔計測法と鼻腔通気度検査を追加し、被験者の選定を継続している。2018年度これらの検査を行った被験者は20名であり、2017年度の被検者と合わせて50名となったが、鼻腔の開存性や通気性と顎顔面形態との関連は認められなかった。