研究課題/領域番号 |
15K11352
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
川上 正良 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (20244717)
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研究分担者 |
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発生・分化 / 細胞・組織 / 遺伝子 / シグナル伝達 / 歯学 |
研究実績の概要 |
本研究では、形態形成を司るWntシグナルについて顎顔面の形成時におけるメカニズムを明らかにすることを目的としている。WntレセプターのantagonistであるDickkopf-1(DKK-1)を上顎突起と前頭鼻突起が癒合する時期stage 20HHのchick embryoに投与すると、Wntシグナルが阻害され、唇裂と上顎骨の欠損を生じることが明らかとなっている。 昨年度は、Wntシグナル阻害による細胞増殖活性の変化を調べるため、BrdUをembryoの静脈に注射し、DABによる免疫組織染色を行い、BrdU陽性細胞を測定した。その結果、DKK-1投与後24時間、48時間で、DKK-1投与群のBrdU陽性細胞の発現割合が有意に減少することを明らかにした。また、Beads埋入6時間後のembryoの上顎突起からreal-time PCRを行ったところ、上顎発生に関与するBmp4、Tbx22、Sox9遺伝子が有意に減少し、上顎突起内の細胞増殖が減少することを明らかにした。 本年度は、上記のDKK-1によるWntシグナル阻害を検証するために、DKK-1投与1時間後、Wntシグナルのup-regulator(Alsterpaullone)を投与して上記の遺伝子の発現抑制がrescueするかどうか調べた。Alsterpaullone はbeta-cateninを増加させ、Wntシグナルをup-regulateすることが知られている。その結果、DKK-1投与後にAlsterpaulloneを投与するとBmp4、Tbx22、Sox9の発現が、rescueすることが明らかとなった。したがって、WntシグナルはBmp4、Tbx22、Sox9遺伝子発現をコントロールし、上顎突起の形成に関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度研究計画の内、Wntシグナル阻害効果を検証するレスキュー実験を実施した(前述)。平成27年度から予定していたin vivo elecroporationは、実験器材が購入できなくなり(製造販売中止)、実験を中止した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究実施計画に沿って実施する。具体的には: Wntシグナルをup-regulateさせた場合について調べる(gain to function)。Up-regulateさせるには、GSK3阻害剤であるAlsterpaullone (Sigma-Aldrich)を用いる。Alsterpaullone をAG1-X2 beadsに浸潤させ、embryoの上顎突起に埋入し、Real-time RT-PCRによるBeads周囲組織のmRNAの定量やBrdUによる細胞増殖、cleaved caspase-3によるapoptosisの発現について調べる。また、形態形成への影響を調べるため、stage 38(投与後12日目;顔面骨格が完成する時期)のembryoを摘出・固定後、Alcian BlueとAlizarin Redの染色を行い、顔面骨格および骨形成の状態を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Micro injectionに使用していた現有のナリシゲ・マイクロインジェクター装置の内、コンプレッサーが老朽化により故障し、使用不能となった。新規更新を行ったため、使用額が変更になった。
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次年度使用額の使用計画 |
別の実験で使用する消耗品に振り替えて使用する。
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