研究課題/領域番号 |
15K11357
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
江尻 貞一 朝日大学, 歯学部, 教授 (40160361)
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研究分担者 |
渡邉 竜太 朝日大学, 歯学部, 助教 (00586927)
北井 則行 朝日大学, 歯学部, 教授 (20271025)
佐藤 和彦 朝日大学, 歯学部, 講師 (20340078)
田中 みか子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (20361909)
池亀 美華 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70282986)
矢野 航 朝日大学, 歯学部, 助教 (80600113)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メカニカルストレス / 骨細胞 / 歯槽骨改造現象 / sclerostin / 有限要素解析 |
研究実績の概要 |
メカニカルストレスが骨に加わるとそれを感知した骨細胞がsclerostinの産生調節を介して骨芽細胞による骨形成を調節する事が知られている。しかし骨細胞が生体骨組織内でどのような種類・強度のメカニカルストレスに対して応答するかは明らかにされていない。本研究では咬合力により生理的に歯牙の遠心移動が生じるラット上顎歯槽骨を用い、骨組織内の種々の応力の分布と強度について有限要素法を用いて解析するとともに、メカニカルストレスに呼応して産生が抑制されるsclerostinの局在分布を組織化学的に解析することで、骨細胞がsclerostin産生調節において反応する応力の種類と強度について解析を行った。
μCT画像をもとに、歯・歯槽骨・歯根膜に物性値を設定した有限要素解析モデルを作成し、ラット上顎歯槽骨における仮想咬合力を過去の報告によって決定した後、歯槽骨における歪み、圧縮応力、引張応力、von Mises応力の分布を有限要素法により解析した。また同一試料にてsclerostinの局在を免疫組織学的に検索し、各種応力の分布と比較した。
von Mises応力が集中する領域の歯槽骨ではsclerostin免疫反応が弱く、特に約0.75MPa以上のvon Mises応力が加わる領域ではsclerostin免疫反応がほとんど認められなかった。また圧縮応力・引張応力の分布とsclerostinの免疫局在分布は一致しなかった。これらの事から、骨細胞のsclerostin産生の抑制反応は、全ての主応力を加味したvon Mises応力の強度に依存しており、圧縮応力・引張応力と個々には呼応していないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度において以下の実験を実施する事ができた。 1.動物実験:麻酔下で生後8週齢Wistar系ラット(雄)の左側上顎第一臼歯、第二臼歯間に歯間分離用のゴムを挿入する。この操作によって、ラット歯槽骨に本来かかっている遠心方向(後向き方向)へのメカニカルストレスを、近心方向(前向き方向)へ反転せた。矯正処置直後、3時間、6時間、12時間、1日、3日、5日、7日経過したものを液体イソペンタン・プロパン混合寒剤(-193℃)で急速凍結固定を施し、パラホルムアルデヒドまたはグルタールアルデヒド・アセトン凍結置換固定し、臼歯部の上顎骨と歯牙を一塊で摘出してパラフィン・樹脂包埋を行った。 2.microCT画像を用いた有限要素解析モデル作成:摘出されたサンプルをμCT撮影し3D立体構築を行った。得られた3D立体構築画像から約10μm/voxelの解像度で歯槽骨の有限要素モデルを作成した。 3.有限要素法を用いた生体力学的解析:ラット及びマウスの歯牙移動モデルを用いて、生理的条件および矯正学的歯牙移動時に骨組織内に生じる種々の歪みや応力の数値データを画像データとして出力し、分析する。モデルの荷重条件の設定には、『歯根に圧迫される歯槽骨表面では骨吸収が生じ、歯根膜によって牽引される領域には骨形成が生じる』という歯槽骨の骨改造現象の原則を利用し、非脱灰標本による酵素組織化学的所見とシミュレーションにおける最大主応力、最小主応力を参考に最適な条件を設定した。なお、非脱灰標本の作製のために新規導入した凍結包埋冷凍機を使用した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降の実施予定内容 昨年度に作成した試料の解析および次に記載した実験を行う予定である。 (1) in situ HybridizationとPCRを用いたmRNA発現の経時的変化の検索:10%EDTAにより脱灰しパラフィン包埋したもの及び非脱灰凍結標本としたものを薄切し、SOST、RANKL、OPG特異的mRNAプローブを用いたin situ Hybridizationを行い、凍結標本よりマイクロダイセクション装置で採取したサンプルにてPCRを行い、メカニカルストレスの分布の異なる領域間での遺伝子発現の比較を行う。 (2)免疫染色による骨細胞由来力学情報伝達因子の分布局在の解析:脱灰しパラフィン包埋したもの、及び非脱灰凍結標本としたものを薄切し、sclerostin抗体(R&D systems)、RANKL抗体、OPG抗体 (Santa Cruz Biotechnology) を用いた免疫染色を行う。また固定後水溶性樹脂に包埋した超薄切片に対し、金コロイド標識した2次抗体を用いて免疫染色を行うことで、骨細胞由来の力学情報伝達因子の輸送経路を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者が担当する in situ HybridizationとPCRを用いたmRNA発現の経時的変化の検索を平成28年度に実施する予定にした結果、下記の実験に使用する物品を平成28年度に購入する事にした。
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次年度使用額の使用計画 |
10%EDTAにより脱灰しパラフィン包埋したもの及び非脱灰凍結標本としたものを薄切し、SOST、RANKL、OPG特異的mRNAプローブを用いたin situ Hybridizationを行い、凍結標本よりマイクロダイセクション装置で採取したサンプルにてPCRを行い、メカニカルストレスの分布の異なる領域間での遺伝子発現の比較を行う。 上記実験過程における消耗品として使用する。
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