研究課題/領域番号 |
15K11363
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野村 良太 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (90437385)
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研究分担者 |
仲 周平 岡山大学, 大学病院, 講師 (10589774)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Streptococcus mutans / コラーゲン結合タンパク / 感染性心内膜炎 / 血清 / ex vivo評価系 / う蝕 / 菌血症 / 細菌塊 |
研究実績の概要 |
う蝕の主要な原因菌である Streptococcus mutans は感染性心内膜炎の原因細菌としても知られている。菌体表層にコラーゲン結合タンパク(collagen-binding protein; CBP)を発現するS. mutansは、健常者の口腔内から約10~20%の割合で分離される。一方で、S. mutans陽性の感染性心内膜炎患者の心臓弁組織からは、CBPをコードする遺伝子断片が約60%の高頻度で検出されることが明らかになっている。本研究では、血清存在下でのCBP陽性S. mutansによる感染性心内膜炎の病原メカニズムについて検討を行った。 CBP陽性S. mutansはヒト血清と反応し凝集塊を形成したが、CBP陰性S. mutansではそのような現象は認められなかった。また、心臓弁を傷害させたラットに、菌血症患者の血液由来のCBP陽性S. mutansを感染させたところ、心臓弁において細菌塊の形成が認められた。一方で、健常者の口腔から分離したCBP陰性S. mutansを感染させても細菌塊の形成は認められなかった。さらに、心疾患患者の心臓弁置換術の際に用いられているウシの心臓弁に、血清を添加したS. mutans臨床分離株を感染させることによるex vivo評価系を確立し、ウシ心臓弁へのS. mutansの付着能を評価した。その結果、CBP陽性S. mutans株感染群では、CBP陰性S. mutans株感染群と比較して有意に高い付着能を示した。 これまでの研究から、CBP陽性S. mutansは、血清と反応することにより細菌塊を形成し感染性心内膜炎の病原性に関与している可能性が示唆された。また、ウシの心臓弁を応用したex vivo評価系を用いることにより、S. mutansの感染性心内膜炎における病原性を簡易的にスクリーニングできる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、コラーゲン結合タンパク陽性S. mutansは血清と反応し、感染性心内膜炎において高い病原性を示すことを明らかにした。また、ウシの心臓弁がS. mutansによる感染性心内膜炎の病原性評価に有効である可能性を示すことができ、研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
コラーゲン結合タンパク陽性S. mutansが、血清中のどのような成分と反応して感染性心内膜炎の病原性に関与しているか検討する予定である。また、ウシの心臓弁を応用したex vivo評価系に関して、ラット感染性心内膜炎モデルに代わるような評価法として応用できるよう改良を加えていく予定である。
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