研究課題/領域番号 |
15K11371
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
杉山 智美 昭和大学, 歯学部, 助教 (20433823)
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研究分担者 |
小田 訓子 (池田訓子) 昭和大学, 歯学部, 助教 (70365708)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 構音障害 / 音響分析 |
研究実績の概要 |
小児の構音は身体の成長、神経系の発達や巧緻性の発達に伴い成長していくと考えられている。今回我々は構音器官の1つである口腔に着眼し、小児の構音と口腔の成長との関係を明らかにするために分析、検討を行った。今回対象としたのは健常成人(第三大臼歯の萌出しておらず、永久歯に欠損がない成人男性)健常小児(乳歯列完成期、上顎前歯部交換期、上顎前歯萌出完了期)、器質的構音障害患者(舌小帯強直症、口唇口蓋裂)、機能的構音障害患者の4グループに分けて検討した。 被験音は、/i/,/s/,/sh/の3音とした。母音である/i/に関しては単音での録音、子音である/s//sh/は母音/a/を子音の前後につけて録音することで子音の特徴をより明確にすることができた。被験者には同じ単語を5回発音させ、5回それぞれに対して音響分析を行った。 音響分析は不偏推定法によるケプストラム対数スペクトラムによりパワースペクトラムの描出を行った。描出したパワースペクトラムの最大エネルギー部位を算出し5回の平均を被験者のデータとした。 1)健常成人での比較:母音/i/ではどの被験者でのピークが複数見られた。年齢別に検討したところ、増齢に伴いピークの値に変化が出る可能性が示唆された。今後は被験者を増やして再検討する予定である。2)健常小児においては、乳歯列期、上顎前歯部交換期では/s//sh/のピーク値には大きなばらつきがみられたが、/i/に関してはばらつきが非常に少なかった。3)器質性構音障害患者に関しては人数が非常に少なく検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
音響システム:構音分析システムに関してはほぼ問題なく稼働している。小児と成人の両方を的確に診断する必要性があるため、設定の一部変更を行い現在は問題ない。今後は器質的、機能的構音障害患者の録音を行うためさらに微細な変化をとらえる必要性がある。構音障害患者に関しては被験者は少ないが健常小児との違いが明らかとなってきているため大きな問題とはならないと考える。 被験者の確保:被験者に関しては問題なく確保ができている。当院では器質的構音障害を併発しやすい口唇口蓋裂児のための外来があるため、外来診療時に録音をおこなうことは比較的容易であると考える。機能的構音障害患者に関しては確保がやや困難であるが、筋機能訓練を行っている患児などを対象に構音障害がないかを確認し録音を行っていく予定である。 センサーシステム:購入予定であったセンサーが予算不足のためセンサーの使用についての再検討を行った。構音時の舌圧を測定するためには非常に小さい圧力も測定することが必要となる。ニッタ社ではなく共和電業のセンサーは比較的小さい圧力測定が可能であること、また温度変化などにも強いため使用することとした。今回共和電業社製のもので実験を行ったところセンサーケーブルを十分長くすることで口腔内と測定システムをつなぐことが可能であると判断し、使用することとした。使用するセンサーの再検討、測定圧力やセンサーを付ける位置の検討を行ったことで、今回やや予定より遅れてはいるが、センサー使用の環境が整ったため今後は問題な医と考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、初めに静的パラトグラムを利用して、圧力が最も正確に測定できる位置を再検討する。各グループ5名程度のパラトグラムを使用しだいたいの位置を検討する。器質的問題を抱える口唇口蓋裂患者に関しては個々の口腔形態に大きな差があるため、被験者すべてにパラトグラムを使用する予定である。また、パラトグラム使用時に圧力センサーケーブルの位置に関して合わせて検討を行う。 被験者は健常成人、健常小児ではなく次年度は構音障害を実際に持つ被験者の収集に力を入れていく予定である。 なお、現在までの音響分析に関してはH28年度秋にある日本小児歯科学会にて発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
音響システムに関しては問題なく稼働したが、舌圧測定システムに関して不備が生じ、再検討に時間を要したため必要機材の購入が遅れてしまったことが原因である。予定ではセンサー決定度に健常成人、健常小児で検討後再度システムの改良を本年度行う予定であったため人件費などの予算を計上していた。しかし、センサーの検討に時間を要したため人件費の使用が今年度は困難であった。 また、平成27年度中の学会参加を検討していたが、システムの改良に時間を要したため発表を行うことが困難であった。成果の発表に関しては平成28年度秋に日本小児歯科学会にて発表予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度はシステム改良のための人件費などの使用がなかったが、システムの基本的な作製が完了したため今後は、詳細な分析が可能となるようにシステムの改良を行う。 また、分析結果に関しては学会などで随時発表を行っていく予定である。
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