研究課題/領域番号 |
15K11377
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
中村 美どり 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (90278177)
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研究分担者 |
中村 浩志 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (00278178)
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (20350829)
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
大須賀 直人 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (80247535)
溝口 利英 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (90329475)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯髄細胞 / 骨髄間葉細胞 / 骨芽細胞 / 石灰化 / アルカリホスファターゼ / オステオカルシン |
研究実績の概要 |
ヒトおよびマウスの培養歯髄線維芽細胞について、硬組織形成能の本質である細胞外基質を石灰化させる能力を調べた。ヒトおよびマウスの培養歯髄線維芽細胞はBMP-2非添加条件化においてもアルカリホスファターゼの活性が高く、β-グリセロリン酸およびアスコルビン酸の添加のみで著明な基質石灰化が認められた。リアルタイムRT-PCRにて発現レベルを解析すると、ヒトおよびマウスの培養歯髄線維芽細胞は、ともにアルカリホスファターゼの発現が骨髄間葉細胞および骨芽細胞より数10倍高かった。さらに、マイクロアレイにてヒトおよびマウスの培養歯髄線維芽細胞と骨髄間葉細胞および骨芽細胞の遺伝子発現プロファイルを作製した。ヒトおよびマウスの双方において培養歯髄線維芽細胞、骨髄間葉細胞および骨芽細胞の総括的な遺伝子発現パターンは、酷似していた。すなわち、骨髄間葉細胞および骨芽細胞のマーカーであるI型コラーゲン、オステオカルシン、Runt-related transcription factor 2(RUNX2)などは上記3種の細胞間において同レベルで発現していた。象牙質および骨細胞の基質タンパク質である象牙質マトリックスタンパク-1 (DMP-1) の発現レベルは歯髄線維芽細胞のほうが高かった。次に、ヒトおよびマウスの培養歯髄線維芽細胞をT細胞およびB細胞を欠損する重度免疫不全マウスの筋膜下に移植した。移植2ヶ月後において、歯髄線維芽細胞移植群では同様の方法で移植した骨芽細胞や骨髄細胞移植群よりも高度に石灰化した硬組織が認められた。再生硬組織には、2種類の組織が同時に誘導され、細胞成分が少ない密な硬組織と、骨髄を伴った骨組織が誘導された。したがって、歯髄線維芽細胞は適当な方法が開発されれば、造血機能を伴った完全な骨を再生出来ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯髄線維芽細胞が骨芽細胞や骨髄間葉細胞と同様に破骨細胞支持能をもち、さらにその発現プロファイルも骨芽細胞や骨髄間葉細胞と酷似していた。実際に筋膜内に移植すると、効率的に硬組織を再生した。以上の結果は、培養歯髄線維芽細胞が、硬組織石灰化のメカニズム解明のためのモデル系として、また、骨再生の材料として特に優れていることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
硬組織の細胞外基質の石灰化の最前線においてCaやPiの濃縮に関与していると想定されるCaチャネルやPiトランスポーターについては、不明な点が多い。平成29年度は、培養歯髄細胞を石灰化機構解析モデルとして用いることで、Ca、Pi濃縮に関わる分子機構の解明とこれを標的とした薬剤の開発に糸口をつける実験結果を見出したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品類が定価よりも安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入に加算する予定である。
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