マウスを用いた口内炎モデルの作成を習熟し、CO2レーザー照射による創傷治癒の促進メカニズムについて、組織学的解析を行っていく中で、計画していたTRPチャネルの発現については、市販抗体を用いた実験条件に苦労したため、Heat Shock Proteinに着目し、解析を開始した。Heat Shock Proteinについては、HSP47、HSP70に着目し、組織学的発現パターンと、Real time PCRを用いた遺伝子発現量について調べたところ、CO2レーザー照射によって、創部周囲上皮のHSP70の発現上昇が確認され、上皮細胞の細胞増殖を活性化している可能性が示唆された。また、創部の間葉組織では、TenascinCの発現が上昇しており、これもまた、創傷治癒を促進するのに効果的なのではないかと考えられた。そこで、これらの因子を上昇させている刺激が、CO2レーザー照射による温熱効果であるかを検証するために、さらに、口腔扁平上皮癌と歯根膜線維芽細胞を用いて、細胞培養実験を計画し、パイロット実験を開始した。温度設定は、マウス組織を用いて、CO2レーザー照射時の組織温度を、微小温度計にて測定し、それを参考に、45度と60度を設定し、培地の温度を上昇させて、温度上昇による遺伝子発現の変化を観察している。今年度は、CO2レーザー照射による細胞の動態変化を観察するため、上皮細胞およ線維芽細胞を用いたin vitroでの検討を開始した。培地の温度を45度、60度に変化させる温熱刺激と、CO2レーザーを培地表面から直接照射するCO2レーザー刺激を行い、これまでに重要な因子として解析を続けてきた、HSP70およびTenascin Cの発現変化を、mRNAレベル、蛋白レベルにて確認した。 結果として、CO2レーザー照射による刺激は、組織だけでなく、細胞レベルにおいてもTenascinCの発現を促進することが明らかとなった。 これまでの成果をまとめ、現論文投稿を行った。
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