研究課題/領域番号 |
15K11379
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
土田 祥央 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (90410422)
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研究分担者 |
佐藤 守 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20401002)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯周疾患 / モディフィコミクス / プロテオミクス / 質量分析技術 |
研究実績の概要 |
プロテオーム解析技術の発展により、歯周疾患のバイオマーカーの開発が盛んに行われている。申請者らも、発現プロテオーム解析を駆使して歯周疾患のバイオマーカー探索を続けてきた。しかし、大部分のタンパク質が何らかの翻訳後修飾を受けて初めてその本来の機能を獲得することを考慮すると、従来の発現プロテオミクスに頼る手法では限界がある。従ってタンパク質の翻訳後修飾にも注目する必要がある。本研究ではモディフィコミクス(翻訳後修飾を特異的に検出する技術)を発展させ、歯周疾患に起こりうる代表的な翻訳後修飾である糖鎖修飾および最も広く研究されているリン酸化に焦点をあてて、歯周疾患における翻訳後修飾を網羅的探索により捉え、歯周疾患の早期診断および再発予測治療効果判定等に応用することを目的としている。
本年度は限外濾過装置を併用した抽出法により歯肉溝滲出液 (Gingival Crevicular Fluid: 以下GCF)からタンパク質を抽出した。ペプチド成分の抽出において最も大きな問題点はキャリアプロテインの影響である。従って、キャリアプロテインの影響を受けずに高効率で再現性が良い有機溶媒沈殿法を用いてGCF からペプチドの抽出を試みた。
MB-LAC ConA, MB-LAC LCA(Bruker Daltonics社)を使用し、N型糖タンパク質を抽出し、逆相HPLCによりフラクション分画した。そして各フラクションを二次元電気泳動後、Progenesis(nonlinear社)解析ソフトウェアを用いて発現解析を行った。健常群・軽度~中等度群あるいは重度歯周疾患群の間で有意に発現量の異なるスポットを切り出し、LC-MS/MS装置LT-Q(Thermo Fisher Scientific社)により現在、同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質の翻訳後修飾のうち最も頻度が多い糖鎖修飾蛋白質網羅的解析について方法論応用の可能性が示唆された。
本年度はiTRAQ 法を用いたリン酸化タンパク質の網羅的解析を行う予定であった。 iTRAQ法とは4種類または8種類の安定同位体試薬(AB Sciex社)で異なる生体試料中のすべてのタンパク質またはペプチドをin vitro で標識後,質量分析計で分析することにより、タンパク質の同定と定量を同時に行う解析方法である。iTRAQ を用いる場合、リン酸化ペプチドのみを濃縮する必要がある。本年度は標識を濃縮前に行う際、iTRAQ 試薬は全消化ペプチド分必要となるため労力がかかってしまいリン酸化タンパク質の網羅的解析まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の達成度はおおむね順調であったが、次年度以降の研究計画では歯周疾患マーカー候補N型糖タンパク質・ペプチドのバリディーションと歯周疾患特異的リン酸化ペプチドアレイの作製と多検体でのバリディーションを予定している。リン酸化タンパク質の網羅的解析まで至らなかったことは非常に大きい問題点である。今後はiTRAQ 法を用いたリン酸化タンパク質の網羅的解析を急速に進める予定である。その他の検討については当初の研究計画にそって進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった試薬が海外取り寄せで年度内での納品ができなかったため、37,183円を繰り越している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降は当初の研究計画にそって使用していく。
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