研究課題
プロテオーム解析技術の発展により、歯周疾患のバイオマーカーの開発が盛んに行われている。発現プロテオーム解析を駆使して歯周疾患のバイオマーカー探索を続けてきた。しかし、大部分のタンパク質が何らかの翻訳後修飾を受けて初めてその本来の機能を獲得することを考慮すると、従来の発現プロテオミクスに頼る手法では限界がある。従ってタンパク質の翻訳後修飾にも注目する必要がある。本研究ではモディフィコミクス(翻訳後修飾を特異的に検出する技術)を発展させ、歯周疾患に起こりうる代表的な翻訳後修飾である糖鎖修飾および最も広く研究されているリン酸化に焦点をあてて、歯周疾患における翻訳後修飾を網羅的探索により捉え、歯周疾患の早期診断および再発予測治療効果判定等に応用することを目的としている。本年度では歯周疾患マーカー候補N型糖タンパク質・ペプチドのバリディーションおよび歯周疾患特異的リン酸化ペプチドアレイの作製と多検体でのバリディーションを行った。
3: やや遅れている
歯周疾患マーカー候補N型糖タンパク質・ペプチドのバリディーションを行った歯周疾患のバイオマーカーN型糖タンパク質・ペプチド候補の妥当性を検討するため、健常者・軽度・中等度・重度歯周疾患患者を対象に行った。糖鎖及びタンパク質に特異的な抗体を購入し、Western blottingにより検証した。歯周疾患マーカー候補N型糖ペプチドにおいては糖鎖及びペプチドに特異的な抗体を購入し、免疫沈降を行い、MALDI-TOF MSで測定し検証を行った。本年度は歯周疾患マーカー候補N型糖ペプチドの糖鎖及びペプチドの免疫沈降およびMALDI-TOF MSでの検証に労力がかかったため、研究の進捗がやや遅れている。現在、歯周疾患で上昇傾向が示唆されたリン酸化ペプチドを合成し、アレイの作成中である。
本年度の達成度はやや遅れているが検討については当初の研究計画にそって進めていく。探索した歯周疾患特異的リン酸化ペプチドでのアレイ作製の前段階として、これまでに歯周疾患患者のGCFおよび歯周組織中で高発現していることが報告されているリン酸化タンパク質についてもリン酸化部位を含むペプチドを合成してアレイを作製する。また、既存のリン酸化ペプチドアレイの応用も行っていく。歯周疾患マーカーの質量分析計を用いた定量系の確立を目指す。バイオマーカー候補の中には抗体を作成できるものもあるが、既知タンパク質が疾患特異的なプロテアーゼ活性の変動により産生されたものや翻訳後修飾を受けていて、特異抗体の作成が困難な場合は、三連四重極型質量分析計を用いたSRM(Selected Reaction Monitoring)法を利用する。ペプチドをダイレクトに測定可能であり、分子選択性が高く、高感度(ng/ml以下の検出感度)・同時多項目定量分析が可能である。
購入予定であった試薬が年度内での納品ができなかったため、消耗品購入見積額と実際の購入額の誤差が生じた。
当初の研究計画にそって使用していく。
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