研究実績の概要 |
エクソソームは細胞から分泌される膜小胞で、内包されるタンパク質、核酸により細胞間情報交換に関与する為、がん診断のための新たなツールとして注目を集めている。 我々は、これまでに歯根膜幹細胞(PDLSC)ならびにその培養上清(PDLSC-CM)がin vivoにおいて創傷治癒促進効果を有することを報告した。さらに、幹細胞培養上清中にエクソソーム(MSC-exo)が存在し、細胞の分化ならびに血管新生に関与することを発見・報告した(Tooi M, et al.J Cell Biochem. 2016;117(7):1658-70, Komaki M, et al.Stem Cell Res Ther. 2017 Oct 3;8(1):219。本研究では、MSC-exoの歯周組織再生効果ならびにその分子機構を明らかにすることを目的とした。 本年度は、幹細胞性に関与するOCT4発現に対するMSC-exoの分子機構をin vitroで検討した。microRNA(miR )は、遺伝子発現を負に調節することが知られる分子である。未分化MSC-exoに存在し、分化後のMSC-exoには存在しない候補miR をmiRアレイ解析、pathway解析から6種のmiRを選択、mimicを合成し、2種のmimicがOCT4発現を抑制することを確認した。更に、この2種のmiRに対するinhibitorを合成、効果を検討したが期待される効果は認められなかった。また、今後in vivoにおいてMSC-exoの効果を検討するために、これまでのラット歯周組織欠損モデルに代わりより実際の歯周炎病態に近い新たな動物実験モデルの検討を行った。これまでに2-30歳のサルの全身ならびに口腔内検診(歯周っ組織検査、細菌検査を行い、歯周炎に罹患する個体を確認するとともにサルにおいて歯周炎との関連が報告された菌をプラーク中より検出した。我々の研究を今後も継続することでエクソソームは、がんなどの診断だけでなく、治療応用への可能性が示された。今後、歯周病発症に関与するエクソソームを明らかにすることで、歯周病分子診断ならびに治療への応用を目指す。
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