研究実績の概要 |
脱共役タンパク(uncoupling protein, UCP)はミトコンドリア内膜に存在しエネルギーを熱として消費させる。5つのサブタイプのうちUCP1は主に褐色脂肪細胞、UCP2は白血球および白色脂肪細胞、UCP3は褐色脂肪細胞と骨格筋に分布する。UCPは肥満、糖尿病、骨粗鬆症、腎疾患において重要な役割を担う。従来これらの疾患と歯周炎との関連性が報告されてきたが、歯周炎におけるUCPの役割は報告されていなかった。本研究は歯周炎、肥満、糖尿病、骨粗鬆症、腎機能とUCP遺伝型との関連性を解析し、UCPの歯周炎における役割を解明することを目的として行った。 閉経後日本人女性においてUCP2およびUCP3の遺伝型は重度歯周炎と強い関連性を示したが、歯周炎と肥満、糖尿病、骨粗鬆症、腎機能との間に関連性は認められなかった。 UCP2について炎症制御機能の報告があるため、歯周炎におけるUCP2の機能をin vitroで解析した。ヒト単球系細胞THP-1をPMA刺激しマクロファージ様細胞を誘導し代表的歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis由来のlipopolysaccharide (LPS)にて刺激したところ、タンパク、mRNAいずれにおいてもUCP2が減少した。 最終年度においてはsiRNAを用いたUCP2ノックダウンを行ったところ、P.gingivalis刺激時の活性酸素およびIL-8産生の亢進が認められた。これらの結果より、UCP2は活性酸素およびIL-8産生の抑制作用を通して歯周炎の進行に関与する可能性が示唆された。本研究の成果はヒト炎症性疾患におけるUCPの役割を示唆した初めての報告であり、歯周炎の診断・治療のみでなく、広く医学分野に寄与すると考えられる。 上記の成果を国内外の学会にて発表したほか論文にまとめ国際学術雑誌に投稿した。
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