研究課題/領域番号 |
15K11389
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤田 剛 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 准教授 (80379883)
|
研究分担者 |
加治屋 幹人 広島大学, 病院(歯), 病院助教 (00633041)
松田 真司 広島大学, 病院(歯), 病院助教 (30611321)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 糖尿病 / 歯周炎 / グリチルリチン / マウス / 血清アミロイド A / Porphyromonas gulae / RAGE |
研究実績の概要 |
糖尿病(DM)は宿主の易感染性を引き起こし,歯周炎の進行・重症化に関与する。一方で,歯周炎は血中の炎症性サイトカイン上昇とインスリン抵抗性の惹起により糖尿病を増悪させる。したがって,DMにおける歯周炎の制御は,両疾患のコントロールに重要である。グリチルリチンは漢方薬である甘草に含まれ,HMGB1阻害による抗炎症作用をもつ。本研究ではDMマウスにおける歯周炎の病態について解析し,グリチルリチンの炎症抑制効果を評価した。 まず,KK/TaJclマウスにHFD32を7週給餌しDMマウスを作製した。このDMマウスに対し上顎左側第二臼歯への絹糸結紮及びPorphyromonas gulae(Pg)の口腔内投与を行い,歯周炎誘発マウスを作製した。 歯周炎誘発DMマウスにおいて,Pg血清抗体価の上昇が確認された。また,歯周炎誘発DMマウスは,非誘発DMマウスと比較して,歯肉の炎症性サイトカイン,血中IL-6, 血清アミロイドA(SAA)の発現が優位に高かった。さらに,空腹時血糖値を比較したところ,歯周炎誘発DMマウスのほうが非誘発群よりも優位に高かった。以上のことから,歯周炎が糖尿病を悪化させるモデルマウスを確立した。 歯周炎誘発DMマウスにおいて,血中HMGB1及びRAGEの値が上昇したため,HMGB1インヒビターであるグリチルリチンを用いて,炎症のコントロールを試みた。歯周炎誘発DMマウスにグリチルリチンを腹腔内投与及び口腔内塗布し,14日目での血清中のSAAの値を評価したところ,腹腔内投与群及び口腔内塗布群はともにSAAの上昇を抑制した。 以上から,DMマウスではPg感染への応答が亢進し炎症が憎悪するが,グリチルリチン投与がその炎症を抑制することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り2年目終了時点で,Pg感染が,糖尿病‐歯周炎の負のスパイラルを示すモデルを確立した。さらにこのモデルにおいて,グリチルリチンが炎症を制御することを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,作成したモデルを用いて,グリチルリチンによる抗炎症効果のメカニズムを解明する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
少額であるため,次年度で調整可能である。
|
次年度使用額の使用計画 |
少額であるため,次年度で調整可能である。
|