研究課題
糖尿病は宿主の易感染性を引き起こし,歯周炎の進行・重症化に関与する。一方で,歯周炎は,血中の炎症性サイトカイン上昇とインスリン抵抗性の惹起によって糖尿病を増悪させることが知られている。したがって,糖尿病患者における歯周炎の制御は,両疾患のコントロールにおいて重要である。また,歯周炎はHMGB1の発現を歯周局所で上昇させること,糖尿病患者においてはreceptor of advanced glycation end-products (RAGE) が増加することがこれまでに報告されていることから,両疾患の相乗的な進行にはHMGB1-RAGE axisの関与が考えられる。グリチルリチンは,HMGB1阻害作用による抗炎症作用を持つ。以上のことから,グリチルリチンのHMGB1阻害作用が歯周組織及び全身の炎症を制御し,血糖値を改善する可能性について検討した。糖尿病マウスへの絹糸結紮及びPorphyromonas gulae塗布は,歯周組織及び血中のサイトカインを上昇させ,血糖値も上昇させた。このマウスに,グリチルリチンを口腔内に塗布すると,歯周組織の炎症性サイトカイン,血中サイトカインの上昇が抑制された。また,血糖値の上昇も抑制された。さらに,歯周組織および血中のRAGE,HMGB1の発現も低下した。同時に,グリチルリチン口腔内塗布はP. gulaeに対する血清抗体価も低下させた。HMGB1の中和抗体は,歯周炎によって誘発された血糖値の増加を抑制した。以上のことから,グリチルリチンの口腔内塗布は,絹糸結紮及びP. gulae感染による歯周組織の炎症を抑制することによって,血中の炎症性サイトカインの制御を行い,インスリン抵抗性の上昇を阻害することで,血糖値が改善することが明らかとなった。さらに,この経路には,HMGB1-RAGEが関与することが示唆された。
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Japanese Dental Science Review
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https://doi.org/10.1016/j.jdsr.2017.11.003