研究課題
本研究の目的はLRG1の歯周組織における発現、および機能解析を行うことである。LRG1は炎症組織で血管新生を誘導するなど炎症の惹起に強く関与することが知られている。近年、TNF-alphaやIL-6などの炎症性サイトカインに対する阻害抗体がRA、クローン病、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患に臨床応用され劇的な治療効果を示している。しかし、これら生物学的製剤、特にIL-6レセプター阻害抗体使用時においては、IL-6の機能が抑制されるため、IL-6で誘導されるCRPといった炎症マーカーが変化しにくい。そのため、IL-6レセプター阻害抗体使用時の炎症の評価や感染症罹患の早期の検出が困難となる。そこでIL-6に依存しないRAのマーカーとして報告されているLRG1に着目した。歯周炎は歯周病原細菌の感染による慢性炎症で、炎症性サイトカインネットワークで調節されている点でRAと類似している。また、RAをはじめとする全身疾患と歯周炎の関連が多数報告され、これらの有病者の歯周病治療の機会が増加している。したがって、LRG1は生物学的製剤使用下にも有効な歯周炎検査マーカーであると仮定した。さらにLRG1が歯周炎とRAに共通する炎症の程度を表すマーカーとなることを明らかにすることとした。RA患者血清40検体中のLRG1量とRA臨床症状には相関があり、P. gingivalis (Pg)血清抗体価とも性の相関を示した。RAモデルマウスにPg感染させたところ、同様にLRG1量とRA症状には相関があり、PgによりRA増悪にLRG1が関与しtル可能性が示唆された。また、in vitroにおいて、LRG1とTGF-betaの共刺激がIL-8をはじめとする、炎症性サイトカインの誘導に関与していた。以上のことから今後LRG1をターゲットにした、歯周炎治療も可能性が見出された。
2: おおむね順調に進展している
in vivoのマウスモデルの実験、臨床サンプルを使用した実験、in vitroの実験が当初の予想通り、順調に進んでいる。具体的には、RA患者血清40検体中のLRG1量とRA臨床症状には相関があり、P. gingivalis (Pg)血清抗体価とも性の相関を示した。RAモデルマウスにPg感染させたところ、同様にLRG1量とRA症状には相関があり、PgによりRA増悪にLRG1が関与しtル可能性が示唆された。また、in vitroにおいて、LRG1とTGF-betaの共刺激がIL-8をはじめとする、炎症性サイトカインの誘導に関与していた。以上のことから今後LRG1をターゲットにした、歯周炎治療も可能性が見出された。
LRG1が直接的にRA増悪、歯周炎進行に関与していることを動物実験で明らかにする。特にLRG1産生細胞、受容体発現細胞を突き止めて、詳細なメカニズムを明らかにすることで、治療のターゲットとしての有効性を明らかにしていく。
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