研究課題/領域番号 |
15K11396
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中村 弘隆 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (70346914)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯周炎 / インフラマソーム / 歯石結晶 |
研究実績の概要 |
①歯石の採取、処理:ヒト抜去歯より歯肉縁上、縁下歯石を採取し、乳鉢と乳棒で粉砕した。蒸留水で洗浄し回収した懸濁液を55 μmフィルターで濾過した後、遠心器で上清を取り除いた。得られたペレットはオートクレーブで滅菌した。これを凍結乾燥して得られた歯石結晶は、軟組織や菌体成分などの有機成分をわずかに含んでおり、それらがTLRと結合しプライミングなしでNF-κBを活性化したため、10 % NaClO溶液に36時間浸漬して有機成分を溶解し十分に洗浄して無機成分のみの試料を作製し、さらに乾熱滅菌器で250 ℃、1時間加熱することにより、菌体成分やタンパクを熱変成させ失活させた 。 ②歯石によるIL-1βの誘導:不死化させたC57BL/6マウスの骨髄マクロファージをLPS存在下、非存在下で2時間インキュベート後、歯石結晶で8-20時間刺激し、培養上清中に分泌されたIL-1β濃度をELISAで測定したところ、LPS存在下で有意なIL-1β濃度の上昇が認められた。またイムノブロットによって細胞lysate中のpro IL-1β(31 kDa)、活性型IL-1β(17 kDa)の上昇を確認した。 ③貪食作用抑制によるIL-1β発現抑制_LPS刺激後ファゴサイトーシス阻害剤であるサイトカラシンDを細胞培地に添加し、歯石結晶でマクロファージを刺激したところ、培地上清中のIL-1βは増加しなかったことから、結晶の細胞質内への取り込みがなければNLRP3インフラマソームの活性化は起こらないことを確認した。 これらの結果は第58回春秋日本歯周病学会学術大会および平成27年度日本歯周病学会九州五大学・日本臨床歯周病学会九州支部合同研修会において発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画立案時の予想通りの結果が認められ、その結果は第58回春秋日本歯周病学会学術大会および平成27年度日本歯周病学会九州五大学・日本臨床歯周病学会九州支部合同研修会において発表されたことから、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定していたノックアウトマウスのcell lineを用いた実験を行い、歯石によって誘導されたIL-1βの産生とNLRP3インフラマソーム活性化の関与を明確にする。 また、ヒト末梢血多形核白血球およびヒト歯周ポケットから分離した好中球を歯石で刺激し、上清中のIL-1β、TNFα濃度をELISAで測定する予定である。 さらに歯周ポケットから分離した好中球のエンドソーム内に貪食された歯石結晶が存在するかを、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初平成27年度内に行う予定であったノックアウトマウスのcell lineを用いた実験が次年度に持ち越され、培養器具やELISAキットを購入しなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養用試薬、ELISAキット、トランスフェクション試薬、プラスチック器具などの購入に充てる予定。
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