研究課題
歯周炎は歯周ポケットの形成、歯槽骨吸収を特徴とする慢性炎症性疾患であり、これらの歯周組織破壊は細菌成分だけでなく、それに対する宿主の免疫応答によって発症、進行するとされている。歯周炎の悪化における細菌成分の働きについては様々な報告があるが、免疫機構の働きについては完全に解明されていない。我々はこれまでにEscherichia coli LPS(E. coli LPS)を抗原として、特異抗体を交互にラット歯肉溝内へ滴下することにより,歯周ポケット形成が誘導されることを報告した。またE. coli LPSで感作したラットの歯肉溝内へ抗原 として高濃度E. coli LPSを滴下すると,歯周ポケット形成や歯槽骨吸収が誘導されることを報告した。そこで本研究では、この実験的歯周炎モデルにT細胞が欠損しているヌードラットを用いて、歯肉溝接合上皮を介して起こる歯周組織破壊におけるT細胞の影響について検討した。今回の実験からアタッチメントロスや歯槽骨吸収などの歯周組織破壊には免疫複合体形成が強く関係していることが改めて示唆された。また、非感作の状態ではT細胞が存在することで歯周組織破壊が促進される一方で、感作された状態ではT細胞が存在することで歯周組織破壊が調節されていることが示唆された。本研究においてT細胞は樹状細胞やマクロファージによってTh1細胞に分化誘導される一方で、免疫複合体の形成によって一部はTh2細胞へも分化誘導され、Th1、Th2細胞の両細胞によって炎症や骨吸収が調節されたと考えた。T細胞が欠損している状態ではこのT細胞の調節がなく、感作によって免疫複合体形成が誘導する補体系の活性化、炎症性細胞浸潤やそれに続く歯槽骨吸収が促進され、結果として歯周組織破壊が強くなったものと考えた。T細胞による歯周組織破壊のメカニズムの解明については更なる研究が必要であると考えられる。
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