骨細胞は骨組織の中で最も数が多く、長寿命の細胞であるが、骨芽細胞や破骨細胞と比較し、その機能は解明されていない。近年、骨細胞および同細胞由来のサイトカインが骨代謝において中心的な役割を果たすと報告され、歯周疾患においても骨細胞が重要な役割を果たすと考えられるが、歯周疾患における骨細胞の機能は不明である。申請者はこれまで人工関節の摩耗粒子により骨細胞が炎症性サイトカインを産出し、人工関節周囲の骨溶解における骨細胞の役割を報告した。本研究ではこれらの知見を歯周疾患の病態に応用するものであり、骨細胞の歯周病原性細菌への応答やそのメカニズムを解明し、骨細胞由来のサイトカインをターゲットとした歯周疾患の新たな診断及び治療法の検討を行うことを目的とした。 平成29年度は前年度より継続して、組織培養を用いて、歯周病原細菌の一つであるPorphyromonas gingivalisより抽出されたlipopolysaccharide(LPS)の骨細胞株MLO-Y4への影響の解析を行った。特に本年度はPorphyromonas gingivalis由来のLPSが骨細胞のおいてどのようにサイトカインを誘導するのか、そのメカニズムとして細胞内シグナリング因子が関与するという知見を特異的なシグナリング阻害剤を用いることにより解明した。さらに、マイクロアレイにより、LPSにより誘導される遺伝子の網羅的解析を行った。得られた知見より、今後、さらなる解析を計画中である。骨細胞は骨組織を構成する主要な細胞であり、同細胞に関わる近年の知見より、骨細胞由来のサイトカインが骨組織の恒常性の維持に重要な役割を果たしていると示唆されており、骨細胞が進行した歯周疾患の歯槽骨吸収においても、歯周病原細菌に対するサイトカイン産生を介し、主要な役割を果たしていると考えられる。
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