研究課題/領域番号 |
15K11400
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
前田 豊信 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (10382756)
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研究分担者 |
羽鳥 智也 奥羽大学, 歯学部, 助手 (10738165)
大須賀 謙二 奥羽大学, 歯学部, 助教 (90347948)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖代謝 / 細胞分化 / MMPs |
研究実績の概要 |
我々の今年度の解析で明らかになったことは以下の3点である。 1.歯周周囲組織の細胞に、外因性の糖中間代謝産物を添加すると、受容体を介して働いて細胞分化と運動とが制御された。さらに、本受容体のアゴニスト添加やノックダウン等を用いた結果から、代謝産物が細胞内に輸送されなくても、同様の結果が分かった。そこで、この受容体リガンドが、細胞分化・運動に及ぼす影響を網羅的に解析したところ、効果濃度と一致して、効果の増減が認められた。ここから、歯周組織再生に有効な物質数種類を新規に同定した。さらに、この代謝産物は、幾つかの骨形成分化マーカ発現制御を伴うものであった。このことから、細胞自身が分泌をする糖中間代謝産物も、オートクリン/パラクリン因子として作用しているのではないかと推察される。 2.また、この糖中間代謝産物の産生が増加するのと同様の環境では、細胞骨格の変化をもたらし、Rho~ホスホリパーゼD1経路を介し、マトリックス金属プロテアーゼ9(MMP-9)の合成・分泌にまで影響を及ぼしてることが分かった。 3.この代謝産物の細胞外濃度の増加で、発現が誘導され分泌タンパク質のうち、ある分泌タンパク質1つに焦点をあてて解析を行った。このタンパク質は、分泌後に再び細胞内に取り込まれて、積極的にシグナル伝達経路を制御している可能性を見出した。またこのタンパク質のノックアウトは、ペルオキシソーム機構に対して影響を及ぼし、脂質合成と石灰化を制御していた。これらから、本研究のターゲット代謝産物は、この分泌タンパク質の転写を調整することにより、細胞分化に影響を及ぼしているのではないかと推察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は以下の4点である。1.歯周組織再生誘導能を有する物質を特定して、2.その再生機構を解析すること、および3.歯周組織におけるエネルギー代謝と分化再生機構の解明、4.新規歯周組織再生誘導材の開発を試みるものである。 このうち、新規に歯周組織再生に有効な物質を数種類同定できた。この再生促進の影響はマウスのみならず、ヒト培養細胞でも確認済みである。また、この代謝産物が多く産生される環境下では、細胞骨格に明らかな影響を影響を受けることを解明した(Maeda T et al.Int J Oncol.2016)。さらに、この再生機構とエネルギー代謝の関連については、ペルオキシソームの機能制御が影響を受けることなど、一部はすでに解明している。しかしながら、転写因子と分泌タンパク質との結合様式は、ドメインを欠損させた・あるいは変異を挿入したタンパクを合成し、ファーウエスタンブロット法とEMSAで解析を行った結果、当初予想していたドメインとは異なる部位での結合が予想された。そのため、現在のところこの結合様式と詳細な結合領域は、依然として不明な点も多い。 そこで、次年度以降にこの点を解明し、研究発表を行いたいと考えている。このことで、ペルオキシソームの機能制御を介した、エネルギー代謝と細胞分化の機構が解明出来ると考えている。また、同定できた数種類の中間代謝産物の臨床応用については、動物実験を含めて歯周組織再生誘導材としての有効性について、さらに詳細な解析が必要であるため、これについても行う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に同定できた数種類の中間代謝産物の臨床応用を目標として、その安全性が重要である。そこで次年度に、まずは以下の2点を解明していきたいと考えている。 1.中間代謝産物が転写を促進する、分泌タンパク質の細胞内移動機構の解明 2.分泌タンパク質が転写因子と結合する場合の結合様式と結合領域 3.ペルオキソームの機能と細胞運動の関連性 これらを解明することで、代謝産物が具体的にどのプロモーターのDNA配列に対して、影響を及ぼすのかが、予測可能となる。従って、中間代謝産物による遺伝子発現への影響を網羅的に解析する必要がなくなると考える。このことは、中間代謝産物の臨床応用(特に為害作用・副作用の確認)に資するものである。さらに、最後に動物実験を含めた歯周組織再生誘導材としての有効性について、詳細に解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、EMSAをRI標識化合物を用いる方法から、non RIによる方法に変更をしたために、標識化合物購入資金が不要になったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にも、EMSAを行う必要があり、non RIプローブ(標識オリゴ)と検出用試薬の購入に充当する予定である。
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