研究課題
歯周病の発症と進行に炎症性サイトカインが深く関与している。歯周病のように局所の炎症性骨吸収を伴うリウマチ性間接炎に対して,生物製剤(抗サイトカイン抗体など)を応用され良好な治療成績が得られるようになった。しかし,生物製剤はコストが高く,歯周病患者には医療経済的に応用することは不可能ではないか。近年,高脂血症治療薬クロフィブラートをマウスに経口投与したところ、間接的に抗炎症性サイトカインの一つであるIL-1Ra産生に働くことが報告されている。そこで申請者はクロフィブラートの抗炎症作用(IL-1Ra産生)に着目し歯周治療応用の可能性を細胞実験と動物実験により検討したいと考え, マウスマクロファージRAW 264.7 細胞の培地中にクロフィブラートを添加したところ、添加したクロフィブラート濃度に依存して有意にIL-1Ra遺伝子発現上昇することが明らかとなった。そこでマクロファージ細胞をポジティブコントロールとして他の細胞を使って調べているところである。28年度に実験的歯周炎マウスに対するクロフィブラートの抗炎症作用を調べられるよう動物ならびにクロフィブラート含有資料の準備を行っている。またこれまでの細菌感染による実験的歯周炎モデルの作製において、近交系マウスでは困難な場合が考えられるため、臼歯に縫合糸を結紮することによる歯周炎モデルの作製も検討している。27年度は研究成果として、IL-1Raは歯周炎局所において、炎症性骨吸収の抑制だけでなく、上皮の歯との接着において、コラゲナーゼー3の産生をも制御し、間接的に細胞外マトリックスタンパクであるラミニンー5の産生に重要であることを明らかとし、公表した。
3: やや遅れている
細胞実験については、計画通り進められているが、実験的歯周炎を惹起するマウスが現在の飼育環境で計画通り繁殖していないため、下記の対応策を実施することにより当初の計画通り研究を進めたいと考えている。1.マウスの系統を近交系に変更し、縫合糸の結紮による歯周炎モデルの可能性を検討する。2.使用予定の遺伝子改変マウスを追加供給できるよう手配中である。(実験可能匹数を確保するのに時間がかかることが懸念される)
基本的に当初の研究計画通り進める予定である。研究計画ではクロフィブラートのみを対象として研究を進める予定だが、高脂血症治療薬として、もっとも臨床応用されているスタチンについても抗炎症可能性を探りたいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
PLoS One.
巻: 10 ページ: ---------
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0140942
Clin Implant Dent Relat Res.
DOI: 10.1111/cid.12369