放射線治療における口腔粘膜炎発症因子と予防薬の網羅的解析に関する研究

2017 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15K11409
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 細川 亮一 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (40547254)
• 研究分担者: 小関 健由 東北大学, 歯学研究科, 教授 (80291128) ; 末永 華子 東北大学, 歯学研究科, 助教 (00508939) ; 菅崎 将樹 東北大学, 大学病院, 助教 (50444013) [辞退] ; 玉原 亨 東北大学, 歯学研究科, 助教 (40756235) ; 丹田 奈緒子 東北大学, 大学病院, 助教 (00422121) ; 佐久間 陽子 東北大学, 歯学研究科, 助教 (90735531) [辞退] ; 伊藤 恵美 仙台青葉学院短期大学, 歯科衛生学科, 准教授 (80596817)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: 口腔粘膜 / 漢方薬 / がん支持療法

研究実績の概要

頭頚部がんに対する放射線治療の早期口腔有害事象の口腔粘膜炎は、治療の完遂率を低下させ、更に口腔内の疼痛を誘発し、放射線治療患者のQOLを著しく低下させる。本研究の目的はこれらの口腔粘膜炎の改善に効果があると思われる薬剤についてその薬理作用について検討を行った。
口腔粘膜上皮細胞を用いた実験では、半夏瀉心湯を加えることで細胞活性が上昇することが通常の培養条件で示された。また、抗がん剤であるシスプラチンを培養液に加えた状況下では、多くの細胞がアポトーシスを起こすが、半夏瀉心湯を加えることによって、アポトーシスを起こす細胞が減少していることが確認された。このことは、半夏瀉心湯が抗がん剤の細胞毒性に対して抵抗性を示すことができた。そのメカニズムを検索するためマイクロアレーを行ったところ細胞周期に関わる因子の発現が上がっていることが示された。また、セルソーティングを用いた解析では、半夏瀉心湯を加えることによって口腔粘膜上皮はS期に留まっていた。このことは、細胞周期をある特定にPhaseに留めることによって、抗がん剤の毒性に対して抵抗性を示していることを示唆している。
また、臨床応用を行ったところ、半夏瀉心湯を使用した群では、口腔粘膜のグレードの悪化を抑制している結果が示されたことと同時に、グレードが悪化したとしてもその期間が短縮されることが示された。このことは、口腔粘膜による疼痛によって経口摂取が困難となる有害事象を考えると患者のみならず医療者にとっても有益な結果であった。