研究課題/領域番号 |
15K11412
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小島 美樹 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (20263303)
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研究分担者 |
永田 英樹 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (50260641) [辞退]
久保庭 雅恵 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (00303983)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / う蝕 / 健診データ |
研究実績の概要 |
今年度は事業所Aの歯科─医科健診リンケージデータを用いて、口腔細菌感染による主要な疾患であるう蝕と全身状態との関連を縦断的に解析し、以下の結果を得た。 未処置歯の治療放置がメタボとその危険因子に与える影響を検討することを目的とした。46歳時の歯科健診情報があり、4年前(42歳時)に未処置歯を有した男性887人を分析対象とした。医科健診情報については、生活習慣の問診項目(朝食頻度、喫煙、飲酒、運動)、血圧値、BMI、腹囲、血清中の糖・脂質マーカーの値を用いた。メタボは、内臓肥満、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症、高血圧症、高血糖症の5つの危険因子のうち3つ以上を有すると定義した。46歳時に未処置歯をもつ者(治療放置群:452人)ともたない者(治療完了群:435人)でメタボ、肥満、内臓肥満、高血圧症、脂質異常症、高血糖症を有する者の割合を比較した。さらに、オッズ比と95%信頼区間を、ロジスティック回帰モデルを用いて朝食頻度・飲酒・喫煙・運動習慣で調整して算出した。治療放置群は治療完了群と比較して、メタボおよびそのリスクを有する者の比率が高かった(メタボ:17% vs. 9%、肥満:38% vs. 27%、内臓肥満:29% vs. 23%、高血圧症:41% vs. 26%、脂質異常症:36% vs. 28%、高血糖症:20% vs. 14%)。また、治療放置群は治療完了群と比較して、有意に高い調整オッズ比を示した(メタボ:1.9[1.3-2.9]、肥満:1.4[1.0-1.9]、内臓肥満:1.6[1.2-2.2]、高血圧症:1.9[1.5-2.6]、脂質異常症:1.4[1.1-1.9]、高血糖症:1.5[1.0-2.1])。中年早期男性において、未処置歯の治療放置がメタボのリスク増加と関連することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年4月1日付で研究代表者の勤務先の異動があり、大阪大学招へい教員として本研究を継続しているが、研究環境の構築に時間を要している。 現在までに、事業所Aの医科・歯科健診情報の収集およびリンケージについては、おおむね計画通りに進行している。今年度は経年的データのリンケージを行い、縦断的な分析を進めている。半定量食物摂取頻度調査法を用いた食生活情報を得るための質問票については、プロトタイプを作成後、多数の被験者が回答するにあたって問題がないかを確認中である。 現在、サンプリング対象者の確保が遅れているため、事業所Bにおける検体試料(唾液・糞便)の採取を開始できていない。健診の流れを損なわないようなデータ収集方法(調査票や採取キットの事前配布、郵送による回収)、検体試料の保管と運搬方法(研究機関外での採取となるため)についても検討中である。また、健診受診者の便潜血検査に用いた糞便の2次利用について、倫理的な問題も検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)検体試料の採取が当初の計画よりも遅れていることから、サンプリング対象者を早急に確保し、検体試料(唾液・糞便)の採取を開始する。 2)これまでの分析により、う蝕と肥満・メタボリックシンドローム要因との関連が強く示唆されていることから、因果関係についてさらに追求する。 3)歯科と医科の健診情報のリンケージは終了していることから、肥満・メタボリックシンドロームなどの代謝性疾患以外の全身疾患について、細菌感染により引き起こされるう蝕や歯周病との関連を探索する。歯科疾患と全身疾患との因果関係を探索するために、長期の観察データが必要であることから、健診データの追加について研究協力者と打ち合わせ中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の行う予定であった検体試料(唾液・糞便)の採取の開始が遅れており、唾液試料の定量・細菌検出、糞便中の腸内細菌叢の解析が実施できておらず、次年度に使用する予定の研究費が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
1)唾液を試料として、全身疾患への関与が報告されている主要口腔常在菌の9菌種をplymerase chain reaction(PCR)法による定量・検出を行う。 2)Terminal Restriction Fragment Polymorphism(T-RFLP)法を用いて、腸内細菌叢プロファイルから推定される各菌群のピーク面積比やクラスターを算出する。解析は検査委託する。
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