研究課題/領域番号 |
15K11412
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小島 美樹 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (20263303)
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研究分担者 |
永田 英樹 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (50260641) [辞退]
久保庭 雅恵 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (00303983)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯周病 / 消化器疾患 / 健診 |
研究実績の概要 |
今年度は口腔細菌感染による主要な疾患であるう蝕、歯周病と全身所見との関連についての疫学的解析、口腔の細菌叢に影響を与える喫煙についての文献的考察、およびメタボローム解析を実施した。 事業所Aの歯科─医科健診リンケージデータを用いて、歯周病と消化器所見との関連についての疫学的解析では以下の結果を得た。 歯科健診データの欠損がない42歳および46歳の4,580人(男性3,923人、女性657人)を対象とした。歯周状態は4 mm以上の歯周ポケットをもつ者を歯周病ありとした。歯口清掃状況は歯口清掃時間が10分以上の者を清掃状況良好とした。歯の喪失は1本以上をもつ者を喪失歯ありとした。X線検査による上部消化管所見ありの者の割合および超音波画像検査による脂肪肝所見ありの者の割合を、歯口清掃状況、歯周病の有無、喪失歯の有無で比較した。有意差が認められた場合は、多重ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比を算出した。上部消化管所見ありの者および脂肪肝所見ありの者の比率は、歯周病あり群は歯周病なし群と比較して、男性では有意に高かった(37.8% vs. 32.8%, P=0.007; 37.9% vs. 31.8%, P=0.001)が、女性では有意差は認められなかった。歯口清掃状況および喪失歯の有無による比較では、上部消化管所見ありの者および脂肪肝所見ありの者の比率に、男女とも有意な差はなかった。飲酒および喫煙習慣のない非肥満者の男性に限定した分析においても、歯周病と脂肪肝所見との間に有意な関連性が認められ、高血糖および脂質異常の有無で調整したオッズ比は3.05(95%信頼区間1.27-7.34, P=0.013)であった。歯周病をもつ40代男性で消化器健診所見が多くみられ、飲酒および喫煙習慣のない非肥満者においても歯周病と脂肪肝との関連性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は平成28年4月に梅花女子大学看護保健学部口腔保健学科教授に着任した。梅花女子大学には、当初の研究計画で使用する予定であった機器や設備がない。そのため、大阪大学大学院歯学研究科の招へい教員として本研究を続けているが、梅花女子大学での学科運営と教育の業務の多忙により、研究遂行に想定以上に時間を要したため、当初の計画より研究の進行が遅延したことから、研究期間の延長を申請した。 現在までに、事業所Aの医科・歯科健診情報の収集およびリンケージについては、おおむね計画通りに進行している。今年度は、2012年~2016年の健診データ(1966年~1984年生まれの約6,300人)の提供を新たに受けるための倫理審査申請を行い、平成29年10月に承認を得た。既に提供を受けた1994年~2011年の健診データ(約11,700人)とのリンケージを実施して、さらに長期間の縦断的分析のための準備を進めている。事業所Bにおける検体試料(唾液・糞便)の採取は、サンプリング対象者を確保できていないため開始できていない。健診受診者の便潜血検査に用いた糞便の2次利用についての倫理的な問題も検 討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)事業所Bの検体試料の採取が当初の計画よりも遅れていることから、サンプリング対象者の確保を進め、検体試料(唾液・糞便)の採取を開始する。 2)これまでの分析により、う蝕と肥満・メタボリックシンドローム要因との関連が強く示唆されていることから、事業所Aより追加で提供を受けた2012年~2016年の健診データ(1966年~1984年生まれの約6,300人)を用いた長期の観察をもとに、これらの因果関係についてさらに追求する。 3)これまでの解析により、肥満・メタボリックシンドロームなどの代謝性疾患以外の全身疾患について、歯周病と消化器所見との関連が認められたことから、細菌感染により引き起こされるう蝕や歯周病と全身所見との関連をさらに追求していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度に事業所Aより健診データの追加提供を受けることができたため、長期間の追跡にもとづく新たな疫学的解析が必要となった。平成29年度に行う予定であった、事業所Bの検体試料(唾液・糞便)の採取の開始が遅れており、唾液試料の定量・細菌検出、糞便中の腸内細菌叢 の解析が実施できていない。以上の理由から、次年度に使用する予定の研究費が生じた。 (使用計画) 1)唾液を試料として、全身疾患への関与が報告されている主要口腔常在菌の9菌種をplymerase chain reaction(PCR)法による 定量・検出を行う。 2)Terminal Restriction Fragment Polymorphism(T-RFLP)法を用いて、腸内細菌叢プロファイルから推定される各菌群のピ ーク面積比やクラスターを算出する。解析は検査委託する。3)統計ソフトウェアを用いて、長期間のコホートデータの分析を行う。
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